コラム 2025NARグランプリ年度代表馬-もし私が選ぶなら
2026年 01月 11日
今年も地方競馬の年間表彰「NARグランプリ」について、ここで紹介する。これは選考委員に選ばれた全国の地方競馬関係者および有識者が、選考委員会に対する投票とそこでの合議を通じ、年度代表馬を含む代表馬が選定されることになっている。そしてこのコラムは、JRA賞で行っているような記者投票で選考されるとして、私が1票を持っているならこういう投票をするという目的で行っている。これに何の権限もないし、そもそも選考に関わっていればこういう話を書くことはできないので、その点をご理解いただければ幸いである。
・2025年の地方競馬概況
海外におけるフォーエバーヤングの偉業に沸いた2025年のダート競馬界だったが、2025年は地方競馬でも海外で大きな偉業があった。それは大井所属のディクテオンが韓国で行われたコリアカップを制し、地方所属馬として初めて海外ダートグレード競走制覇を成し遂げたからである。同馬はその凱旋レースとなった東京大賞典でも、国内トップクラスが集結する中で地方勢として20年ぶりとなる勝利。地方競馬ファンを大いに盛り上げる活躍を見せてくれた。
さらにJBCスプリントでも大井所属のファーンヒルが勝利し、2021年以来となる複数の地方所属馬が統一GⅠ勝利を挙げる年となった。古馬統一グレード勝利となれば年間3勝だったものの、この他にも上位を賑わせた馬が少なくなく、地方勢が存在感を発揮した1年だったといえるだろう。ただしその3頭は全て中央でデビューした馬。生え抜きでタイトルを手にする馬がいなかったことは、残念に思う。
一方で3冠路線2年目を迎えた3歳路線は、羽田盃で大井生え抜きのナイトオブファイアが2着に入り、手が届かない路線でないという印象を与えてくれた。特にこの路線のホスト役である南関東から出てきたことで、翌年以降に向けていい流れを産んでくれるのではないか。しかし最も注目された3歳馬となると、無敗で兵庫3歳3冠を達成したオケマルに奪われてしまった気がする。これがこの馬にとっても、ダート競馬にとっても良かったのかどうかは、これからの歴史が証明してくれるだろう。
そして2歳世代は、エーデルワイス賞をリュウノフライトが地方所属馬としては初めて無敗で制した他、2026年に期待が膨らむ存在が多数輩出。中央の芝でも3年ぶりに勝利した馬が出るなど、明るい話題が多かった印象がある。この流れを2026年につなげることが出来るか、期待したいものだ。
・年度代表馬の選考過程
さて年度代表馬だが、今年は地方所属馬として統一GⅠを制した2頭、ディクテオンとファーンヒルの比較になる。ともに2024年末の時点では中央所属だった馬による争いというのは、前例がなかったと思う。
ディクテオンは年間5戦2勝。2勝は冒頭で紹介した東京大賞典とコリアカップで、その他にも川崎記念2着がある。一方のファーンヒルは7月に転入後、全て重賞で3戦無敗の成績を残し、JBCスプリントまで制覇した。しかしファーンヒルにしてみれば相手が悪いという状況で、優位に立つ話があるとすれば無敗だったという所だけ。数々の偉業を成し遂げたディクテオンには遠く及ばないといえ、私はディクテオンを年度代表馬に選ぶことにした。
<博田伸樹が選ぶ、2025NARグランプリ最優秀馬>
(カッコ内は地方所属としての最終出走時の所属)
【2歳最優秀牡馬】ベストグリーン(北海道)(次点・ゴッドバロック)(北海道)
【2歳最優秀牝馬】リュウノフライト(北海道)(次点・アンジュルナ)(浦和)
【3歳最優秀牡馬】ナイトオブファイア(大井)(次点・オケマル)(兵庫県)
【3歳最優秀牝馬】プラウドフレール(船橋)(次点・ホーリーグレイル)(川崎)
【古馬最優秀牡馬】ディクテオン(大井)(次点・ファーンヒル)(大井)
【古馬最優秀牝馬】フェブランシェ(大井)(次点・マーブルマカロン)(大井)
【最優秀短距離馬】ファーンヒル(大井)(次点・ムエックス)(船橋)
【最優秀ターフ馬】ビッグカレンルーフ(北海道)(次点・シャイニーロック)(岩手県)
【ばんえい最優秀馬】メムロボブサップ(次点・コマサンエース)
【年度代表馬】ディクテオン(大井)(次点・ファーンヒル)(大井)
※年度代表馬以外の選考について
ここからは各部門の選出理由を紹介します。
<2歳最優秀牡馬>
比較の対象となるのは、兵庫ジュニアグランプリで2着に入ったゴッドバロックと、全日本2歳優駿で地方馬最先着となる3着だったベストグリーンの2頭。勝利に近づいたという意味ではゴッドバロックだが、重賞となればサッポロクラシックカップの1勝のみで、惜敗も多かった。対するベストグリーンは鎌倉記念を圧勝するなど、地方馬には無敗。栄冠賞で直接破った1戦も見逃すことはできず、こちらを選出することにした。
この2頭には及ばないが、ハイセイコー記念を制して南関東のナンバー1となったゼーロス(大井)は、唯一の敗戦がベストグリーンに敗れた鎌倉記念3着。その時も道中バカつくなど力を発揮できなかったもので、将来性では遜色ない存在ではないだろうか。
<2歳最優秀牝馬>
牝馬限定唯一の統一グレードであるエーデルワイス賞を無敗で制したリュウノフライトと、これを東京2歳優駿牝馬で土をつけたアンジュルナの比較は、極めて難解だった。直接対決を重視するならアンジュルナになるが、統一グレードの重みを逆転するとなれば、無敗かそれに近い総合的な評価が欲しい。そうなるとローレル賞勝ちがあるものの、それまでに2度の敗戦があった点はマイナスといえるため、東京2歳優駿牝馬で敗れたとはいえ3着と崩れなかったこと。さらにエーデルワイス賞2着のトウカイマシェリが兵庫ジュニアグランプリを制したことも加味し、リュウノフライトを選出するに至った。
また“グランダム・ジャパン”で3勝を挙げたココキュンキュン(兵庫県)と、芝のジュニアグランプリをはじめ重賞4勝を挙げたセイクリスティーナ(岩手県)も、年が年なら候補となる実績を残した。素材だけなら2戦2勝のエンドレステイル(高知)もおり、楽しみが多い世代だと思っている。
<3歳最優秀牡馬>
羽田盃で2着に入ったナイトオブファイアと、東京ダービーで地方馬最先着となる3着に入ったシーソーゲーム(大井)という、統一GⅠで好走した2頭が候補。この比較では京浜盃3着・東京ダービー4着もある上で直接対決といえた戸塚記念でシーソーゲームを破って制した実績が大きく、ナイトオブファイアを選出した。
しかしシーソーゲームを次点とするには、南関東で重賞タイトルを手にしていないというのが、元中央馬という経緯を差し引いても引っかかるところ。そこでホッカイドウ競馬の3歳3冠を制したソルジャーフィルド(北海道)と、無敗で兵庫3歳3冠を制したオケマルを加えて再検討した。
そうなると無敗で兵庫3歳3冠を制したオケマルの話題性が、俄然注目される。他地区の馬と一切戦わず、また古馬相手の園田金盃で2着に敗れるなど、マイナス材料は数多い。それでも地方競馬における話題の中心にいたことと、3歳3冠で破った相手が交流競走で数多く勝利を挙げていたことを踏まえ、オケマルを次点に選ぶことにした。
また俎上には上がらなかったが、統一グレードで2度入着を果たし、古馬相手のゴールド争覇など年間重賞5勝を挙げたケイズレーブ(愛知県)の活躍は特筆もの。もし統一グレードで馬券圏内に喰い込んでいたら、もしくは惜敗した楠賞を勝っていれば、少なくとも次点争いの議論に加えていたはずだ。
<3歳最優秀牝馬>
マリーンカップを制したプラウドフレールと、関東オークスで2着に入り“グランダム・ジャパン”の総合優勝を飾ったコパノエミリア(愛知県)の、統一グレードで結果を残した2頭。これに統一グレードに匹敵する扱いにある楠賞を制したホーリーグレイルも、候補に加えた。
最終的に春にも(浦和)桜花賞を制するなど、年間を通じて3歳牝馬路線を牽引したことを重視してプラウドフレールを選出したが、マリーンC以降の2戦が着外に終わり、心証が悪かったのも確か。そのため楠賞で統一グレード入着馬2頭を破り、東京シンデレラマイルではプラウドフレールを含め、他を圧倒するパフォーマンスを見せたホーリーグレイルの逆転選出も正直考えていた。しかしホーリーグレイルは、年間を通じ統一グレード未出走。いかに高みを目指していたかという部分で見劣っていたことを、見逃せなかった。
<古馬最優秀牡馬>
年度代表馬の選考と重複するので、ここでは割愛します。
<古馬最優秀牝馬>
統一グレードのスパーキングレディーカップを制したフェブランシェの対抗馬となりうる実績を残した馬がおらず、この選出に異論はないだろう。
一方で苦労したのが次点の選定で、年間を通じて活躍した馬もいなければ、牡馬相手に重賞勝ちを収めた馬も東海クラウンを制したエイシンジョルト(笠松)のみ。その結果残ったのはフェブランシェが勝ったしらさぎ賞で2着に入り、牡馬相手の埼玉新聞栄冠賞でも2着に入ったツーシャドー(浦和)と、さきたま杯6着にスパーキングレディーカップ4着のマーブルマカロン。しかし前者は年間未勝利というのが致命的なマイナスで、それなら条件戦でも2勝を挙げたマーブルマカロンを取り上げることにした。
<最優秀短距離馬>
JBCスプリントを制したファーンヒルは、年度代表馬の俎上にも挙がる存在だけに、この選出に異論は出ないだろう。
また次点はさきたま杯で2着のムエックスとオーバルスプリント2着のアウストロ(浦和)に、マイル以下という対象範囲からスパーキングレディーカップを制したフェブランシェを加えた3頭で比較。この中では統一GⅠで結果を出したということに加え、統一グレードに匹敵する評価ができるオグリキャップ記念を制したこと。さらに年末のゴールドカップでフェブランシェを破った実績から、ムエックスを選定した。
<最優秀ターフ馬>
今年は評価の基盤となる盛岡芝の地方全国交流競走が全て実施された。その中で古馬のOROカップを制したシャイニーロックは、地元限定のいしがきマイラーズも制しているが、中央遠征した富士Sがシンガリ負け。この結果を見てしまうと、地方所属馬として3年ぶりに中央OP(すずらん賞)を制したことを評価してビッグカレンルーフを選出するのがふさわしいと判断した。
<ばんえい最優秀馬>
今年はレース数を絞っていたメムロボブサップだが、3月のばんえい記念をはじめ重賞3勝を含む6戦5勝。これに迫る実績を残した馬はおらず、これを選出。次点には9月以降に出走がなかったものの、ばんえい記念2着で重賞2勝を挙げたコマサンエースを取り上げた。
