盛岡「マイルチャンピオンシップ南部杯」全頭解説(2025年10月13日 18:15発走)
2025年 10月 12日
2017年からニコニコ動画で「リアルダービースタリオン」というプロジェクトが始まった際、このブログでも紹介させていただいたので、ご存知の方もいらっしゃるだろう。一世を風靡したゲーム「ダービースタリオン」の世界観を、現実の世界で再現するというコンセプトのもとに始まったリアルドキュメント。そのプロジェクトから誕生したレライタムが今回、マイルチャンピオンシップ南部杯に出走することで、プロジェクトは大きな成果を生み出した。レース当日は通常のニコニコ生放送による中継とは別に、レライタムを応援するニコニコ生放送も行われる予定。ネット観戦予定の私は、その放送にも目を向けながら、怪物が生まれる舞台に注目したいと思う。
<お知らせ>
今後11月3日に行われるJBC(ジャパン・ブリーディングファームズ・カップ)における、統一GⅠ3競走の概況を順次掲載いたします。
盛岡競馬12レース「第38回 マイルチャンピオンシップ南部杯」
(古馬・JpnⅠ・1600m)
<全頭解説>
(1)番 リメイク(中央)
コリアスプリント連覇をはじめ、世界を股にかけて戦ってきた国内有数のスプリンターが、2年ぶりの国内戦にこのレースを選んできた。マイル戦は3歳時のユニコーンS6着のみだが、勝ち馬から0.2秒差ならこなせそうな雰囲気。ただ半年ぶりの実戦に加え、昨秋から大敗が続く現状では、今後のきっかけを掴みたいのが正直な心境だろう。
(2)番 ヘリオス(岩手県)
このレースで単騎逃げから2着に踏ん張ったのは3年前の話。今年、高知を経由して岩手移籍後に1800mのあすなろ賞で重賞初制覇を果たしたのには驚かされたが、裏を返せば岩手の古馬戦線が手薄だということ。実績面から岩手の大将格を担うが、転入後は元々の主戦場だったマイル以下で結果が出ておらず、多くは望めないだろう。
(3)番 スプラウティング(岩手県)
中央準OPで頭打ちの状況で転入し、初戦の栗駒賞を制覇。しかしその後は重賞になるとひと息の結果が続いており、更に相手が強くなるこの舞台で強調できる材料はない。地元馬の最先着が、現実的な目標だと思う。
(4)番 ゼットセントラル(岩手県)
中央1000万下交流勝利や青藍賞2着と、勢いがあった昨年が11着。しかし今年は1度も馬券圏内に入っておらず、昨年レベルの結果を残すことは厳しい。後方から何頭交わせるか以上の期待は、酷でしかない。
(5)番 ミックファイア(大井)
古馬との戦いになってから使われた舞台は全て統一GⅠ。1度も馬券圏内に届いていないが、4着だった昨年のこの舞台を含め、高速ダートのマイル戦では爪痕を残している。一方でスタートの出遅れ癖は、改善する気配がない。台頭するためには、互角のスタートを切れることが絶対条件だろう。
(6)番 イグナイター(兵庫県)
このレースで2着に入り、直後のJBCスプリントで頂点に立った2年前がこの馬の絶頂期。その後は海外遠征を交えたローテーションも影響したか、思ったような結果が出ていない。それでも統一GⅠ3戦全て掲示板の盛岡コースは、最も安定している舞台。この1戦がラストランという情報もあり、渾身の走りが見られることを期待したい。
(7)番 シャマル(中央)
かしわ記念連覇に加え、相性が良くなかった前走さきたま杯でもレコード勝ち。マイル路線における主役の座を揺るぎないものとしており、3年前に初のマイル戦で3着だった当時と、心理的にも立場的にも全く違う形で臨めるはずだ。ただ主戦騎手の落馬負傷による石川倭騎手への手変わりは、乗り手を選ぶ印象がある馬だけに気がかりである。
(8)番 レライタム(岩手県)
初勝利は今年1月までかかったが、そこから岩手移籍を挟んで一気に軌道に乗り、この舞台まで駆け上がった。しかし重賞初出走となった前走青藍賞は、中団のまま7着と、壁に当たったのは確か。それを糧に前進する姿があれば、今回は十分なように思う。
(9)番 エコロクラージュ(兵庫県)
3歳時に楠賞を制した馬が、2年の時間を要して重賞戦線に戻ってきてからようやく素質が開花。春の兵庫大賞典でイグナイターを追い詰める走りを見せると、前走佐賀サマーチャンピオンでは3着と、統一グレードでも結果を残した。今までより更に相手は強くなるけれど、時計勝負に対応できればチャンスはあるかもしれない。
(10)番 ペプチドナイル(中央)
レモンポップとのマッチレースの末に2着だった昨年は、むしろ勝てたレースを落とした印象も。ただ昨年1年、マイル路線で結果を残し続けたことを象徴する1戦だったことも間違いなかった。その勝ち馬がいない今回は大きなチャンスのはずだが、海外遠征で大敗し、それ以来となる帰国初戦。まずは当日の気配を見たいところである。
(11)番 ウィルソンテソーロ(中央)
昨年のJBCクラシックで念願の統一GⅠホルダーとなったものの、その後は再び勝ち切れない日々に戻ってしまった。今回は昨年のフェブラリーS8着以来のマイル戦に矛先を向けたが、初の統一グレードタイトルが1500mのかきつばた記念なら、距離自体は大丈夫。あとはこの路線における、トップクラスとの力関係だけだろう。
(12)番 クラウンプライド(中央)
盛岡コースでの1勝2着2回は、いずれも2000m戦。実績がないマイル戦でもここに使ってきたのは、そのコース相性に加え、吉原寛人騎手を鞍上に迎えることが出来たからか。昨年のかしわ記念は、スタート直後に落馬寸前の不利があったもので参考外。この距離でも戦えるなら、侮ることはできないように思う。
(13)番 マイネルアストリア(岩手県)
ブービー負けだった昨年に続く出走。今期手にした2勝はいずれもB1級で、地元のOP馬相手では前走青藍賞で大敗したように、持ち味である先行力は通用していない。その状態では今年も参加するだけになりそうである。
(14)番 シックスペンス(中央)
(15)番 サンエイコンドル(岩手県)
前走青藍賞で重賞初出走を果たしたが、後方のまま8着。B1級で戦っていた期間が長く、地元ファンへの顔なじみはあっても、ここで通用する要素は全く見当たらない。出走枠を埋めるために名を連ねただけの印象だ。
(16)番 サンライズジパング(中央)
これまでの統一グレード3勝は全て1800m以上も、今年のフェブラリーSで2着と、マイル戦への対応力はある。盛岡コースも昨年不来方賞を制しているように、条件的には問題なさそう。一方で気になるのは、直前になって帝王賞を回避することになった体調面。動ける状態にあれば、待望の統一GⅠタイトルに手が届いておかしくない。
(詳細な出走表は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)
1着 (11)番 ウィルソンテソーロ(4番人気)
2着 (14)番 シックスペンス(5番人気)
3着 (10)番 ペプチドナイル(2番人気)
4着 (16)番 サンライズジパング(1番人気)
ウィルソンテソーロ-逃げたペプチドナイルが刻んだ前半1000mのラップは58.3秒と、レモンポップが勝った直近2年より約1秒速い流れ。これを先行集団で余裕をもって追走すると、4角手前から追い上げた時の手応えが抜群に良かった。その手応えそのままに残り200m付近で先頭に立つと、あとは離す一方の圧勝劇。これまでのシルバーコレクターぶりが嘘のような走りで、統一GⅠ2勝目を手に入れた。
レース後に川田将雅騎手が「マイルがベストと思っていた」と語ったのには驚いたが、マイルのスペシャリスト的存在が少ない現状を差し引いても、その言葉を裏打ちするだけの中身はあった。一方で絶対能力も求められる舞台なので、フォーエバーヤングとミッキーファイトがいない組み合わせであれば、そこで圧倒できる地力があったのも事実。必要以上に人気を落としていたが、勝つべくして勝った1戦だったといえそうだ。
ペプチドナイル・・・昨年レモンポップをマークする競馬をしたとはいえ、シャマルのハナを叩くとは正直思わなかった。1-2着馬の切れ味に屈したのは慣れない競馬も影響しただろうが、昨年より時計は詰めているように、帰国初戦でもしっかり力は出し切った。ただマイル以外ではひと息の競馬が続いており、この先にどう目標を探すのかが課題に映る。
サンライズジパング・・・先行グループには取りついたものの、この馬だけは道中からおっつけ通し。後方で腹をくくって届く組み合わせでもなく、この位置取りは仕方なかったと思うが、向正面であの手応えになって戦えるコース設定ではない。それに忘れてはいけないのが、今回が統一GⅠ5戦目という現実。この壁を痛感する結果だったかもしれない。
シャマル(6着)・・・スタート直後に内からイグナイター、外からペプチドナイルに来られてしまい、結局ハナに立てず。4角でも内外に馬がいる窮屈な競馬を強いられ、そこから粘れなかった。戦前から悪い流れが多かったことに同情するものの、春当時に見せた迫力をパドックで感じなかったことも、敗因のひとつに挙げられるかもしれない。
イグナイター(10着)・・・スタートを決めてハナを奪わんかのシーンを作ったが、それが唯一の見せ場。そこで引くと勝負所からジリジリ後退して、地元勢以外では最下位に終わってしまった。レース後に正式に引退を表明し、後日引退式が行われる予定である。
