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コラム ジャパンダートクラシックを前に、地方所属の3歳馬を格付けする

3冠路線が新たに整備された3歳路線。その3冠最終戦として、昨年までのジャパンダートダービーから改称したジャパンダートクラシックが、10月2日に迫って来た。しかもこの舞台に米ケンタッキーダービーであわやの走りを披露したフォーエバーヤングをはじめとして、中央勢は新装初年度にふさわしい歴史的なメンバーが集結すると噂されている

しかし地方所属馬も各地で注目を集める存在が登場し、この舞台で迎え撃とうとしている。そこでこの機会を利用して、8月以降に行われた3歳限定の注目レース(ダート統一グレードを除く)を振り返りつつ、地方所属の3歳馬を格付けしてみたいと思う。

おことわり・このコラムはジャパンダートクラシックの選定・登録馬が明らかになる前に作成しております。

・黒潮盃-ダテノショウグンの強さは果たして本物か

まず8月14日に大井競馬場で行われた黒潮盃を取り上げる。ここは無傷の6連勝中だったダテノショウグンが更に連勝を延ばせるかに注目が集まったが、東京ダービー出走組を寄せ付けずに圧勝。大舞台に向け、期待を膨らませる格好になった。

ただこの1戦におけるダテノショウグンは、スタートで出遅れて後方からになり、それを向正面で押し上げて巻き返す、少々乱暴な競馬。しかも逃げたオーウェルに3角から抵抗され、捲り切れないように映ったことから、並みの馬なら崩れてもおかしくない形だった。ところが直線に向くと、レース最速となる12.2秒のハロンタイム(残り2ハロン目)で先行勢を捉えると、最後は2着シシュフォス3馬身半差1頭だけ力の違いを見せつけた走りだったのは間違いない。

爪の不安で春を棒に振ってしまったこともあり、この勝利でダテノショウグンに対する期待値は確かに高まった。だが1年前に3歳路線を席巻したミックファイアと比べてどうかとなれば、厳しい言葉も必要かもしれない。それは2着だったシシュフォスが、東京ダービーで南関東最先着となるが6着も、全くレースに参加できなかったから。しかもこの時、シシュフォスは2キロ重い58キロで戦っており、見た目こそ圧勝でも勝負付けが済んだと言い切れないのだ。

つまりダテノショウグンがもしその次元だとすれば、中央勢相手に勝負できる期待値は大きく下がる。そもそもこの世代の南関東デビュー組は、ダテノショウグン以外は低レベルで推移していた現実もある。負けていないことは魅力でも、それが過大評価になっていないか、この先に待ち受けるジャパンダートクラシックで明らかになると思っている。

・西日本3歳優駿-対地方馬無敗のシンメデージーが、貫録の大差勝ち

ここから紹介する2レースは、ツイッターの方でレースの振り返りを行っていない。そのため敗れた馬も含めて、詳しく掘り下げていく。

西日本地区6場持ち回りにより、生え抜き3歳限定の交流戦として行われる西日本3歳優駿が、今年は9月1日に金沢競馬場で行われた。ここは東京ダービーで地方馬最先着の4着となったシンメデージーが秋初戦に選んだこともあり、他の重賞勝ち馬は笠松から参戦したワラシベチョウジャのみ。勝ち方が問われる1戦となったが、貫録の大差勝ちで順調なスタートを切っている

レースは3番手追走から、2周目向正面で逃げるガガヒャクマンゴクを馬なりで交わし先頭に。その後も軽く気合を突けるようなシーンはあったが、最後まで手綱が激しく動くシーンがないまま、後続は離される一方。結局2着ワラシベチョウジャ2.2秒の大差をつけて、秋初戦を飾った。

ここで紹介したいのは、この1週間前に同じ2000mで行われた地方全国交流重賞のイヌワシ賞だ。今年の名古屋GPで2着に入ったヒロイックテイルがレコードで大差勝ちを果たしたが、この時2着争いを演じた4頭のタイムが2分7秒8~8秒0だった。それに対しこの日のシンメデージー2分8秒3。良馬場だったイヌワシ賞に対し、速い時計が出ていた重馬場だったことは割り引く必要があるが、もしこのレースに出ていたら2着争いには十分加われていただろう。それなら十分すぎる始動戦といえそうである。

それ故に2着以下が千切られてしまったのは、仕方ない部分もある。それでも5着だった名古屋のニホンピロホリデーは、4月に中央未勝利交流を勝っていた馬。それなら敗れた馬たちを論評に値しないと切って捨てる必要はないだろう。

そして2着に入ったワラシベチョウジャは、デビュー5連勝で笠松ナンバー1の評価を得ていた馬。その後は勝ちきれないものの重賞好走を繰り返しており、ここでも初の長距離戦ながらしぶとく脚を伸ばして2着争いを制した。地力の高さを示しただけでなく、距離にメドを立てたことも収穫で、今後の選択肢が広がったと思う。

余談だがこのレース、昨年までの西日本ダービーから名称変更されたものだが、2001年に馬齢表記が数え年から満年齢に変更された際、誤解を招くことから競走名に“3歳”は使わないことになっていた。それから約四半世紀が経って誤解を招く恐れがなくなったともいえるが、20世紀から競馬を見てきた私のような人には違和感が残る。来年までにいいレース名を、改めて考えてほしいものだ。

・戸塚記念-見せた統一グレードホルダーの底力。復帰戦でもサントノーレが圧勝

南関東の3歳重賞は多くがダート統一グレード化した関係で、9月4日に行われた戸塚記念は事実上、南関東限定の3歳チャンピオン決定戦といえる位置づけになった。この舞台で注目を集めたのは、京浜盃で中央勢相手に圧勝しながら、故障でその後の2冠に出られなかったサントノーレ。復帰戦となった1戦でどんな走りを見せるか注目されたが、終ってみれば2着に6馬身差をつける圧勝。最高の形で復帰戦を飾った。

レースはハナを主張したヨルノテイオーが単騎逃げの形を作り、サントノーレは1番枠の利もあって2番手をスンナリ確保。その後2周目向正面で中団以降にいた各馬が一気に動き、一気に慌ただしくなったものの、それに吞み込まれる前にサントノーレは先頭に抜け出す。しかしこの時、まだ手応えは余裕十分で、直線に向いて追い出されると差が開く一方に。統一グレードホルダーの底力を、まざまざと見せつける復帰戦となった。

復帰戦を飾ったサントノーレプラス23キロの馬体重と、必ずしも万全の仕上げといえない状態でこれだけの走りを見せたのは見事だった。ただ2分20秒0の勝ちタイムは、2100mで行われるようになってからレース史上2番目に遅いもの。極端に時計がかかる馬場という印象はなかったので、これを状態が良くなれば詰められると捉えるか、レースレベルの問題と捉えるかは難しい。気になったとするなら、その1点だけだろう。

2着には最後方近くにいたフロインフォッサルが追い込んできた。末一手の戦い方は羽田盃3着の頃と変わらず、まくり合戦のような道中の動きから1テンポ待ったことが今回は奏功したか。それでも春より長く良い脚を使えた印象で、成長が窺えた1戦になったのは確かだと思う。

一方で3着のマコトロクサノホコは、2周目向正面で動いた流れでサントノーレまで捕まえにいこうとしたが、捕まえられずに最後息切れしてしまった。東京湾Cを勝った実績馬で力がある所は見せられたが、負かしに行ったことでかえって力の差を見せつけられた格好になった。

・上位に名を連ねたのは・・・地方所属3歳馬ランキング

ここで地方生え抜きの3歳馬について、各地区の概況的な話題や9月3日に行われたダート統一グレードの不来方賞(盛岡)の話を含め、ランキング形式で紹介したいと思う(9月14日基準)。過去にも3歳戦線を総括する意味で作成したことがあったが、今回はジャパンダートクラシックを念頭に、中長距離路線における評価を示したもの。そのため短距離路線で活躍している馬は、今回ランキングから外している。また中央デビューの3歳馬は、対象外になっていることも申し添えたい。

<地方所属3歳馬ランキング>

1位 サントノーレ(北海道→大井)

2位 シンメデージー(高知)

3位 プリフロオールイン(高知)

4位 ダテノショウグン(大井)

5位 フジユージーン(岩手県)

6位 ブラックバトラー(北海道)

7位 オーシンロクゼロ(兵庫県)

8位 ウルトラノホシ(佐賀)

9位 フークピグマリオン(北海道→愛知県)

10位 パッションクライ(北海道)

次点 シシュフォス(北海道→船橋)

次点 ニジイロハーピー(北海道→愛知県)

次点 フロインフォッサル(船橋)

次点 マコトロクサノホコ(北海道→船橋)

次点 マルカイグアス(兵庫県)

※カッコ内は所属で、初出走→最終出走時(生え抜きは初出走を省略)。次点は馬名の五十音順

1位のサントノーレ京浜盃で中央勢を圧倒したこともあり、衆目一致といえるだろう。当時2着のアンモシエラがその後の羽田盃と東京ダービーでも好走していただけに、なおさら戦線離脱は残念だったが、復帰戦となった戸塚記念を圧勝。更なる上積みを期待できる状態で3冠目に間に合っただけに、その無念もひっくるめて暴れてほしいし、それができる存在だと思っている。

全国区の大物を2頭輩出した高知勢は、2-3位にランクした。同一厩舎で使い分けがされている中で序列は難しかったが、東京ダービー4着など遠征競馬でも結果を出しているシンメデージーを2位に、高知3冠を達成したプリフロオールインを3位とした。この対決が実現する際には、統一グレード級の注目度を集めるはずだが、それはどんな形で実現するだろうか。

大井生え抜きのダテノショウグンを4位としたのは、少し厳しいと思う人が多いだろう。それだけ南関東生え抜きに対する評価が低いことの裏返しで、実際10位以内に南関東デビュー馬は他に入れなかった。だからといって上位とした馬たちより、弱いと評する材料が全くないことも事実である。

岩手で無敗の連勝街道を続けていたフジユージーンは、ダート統一グレードの不来方賞で4着に敗れ、一敗地にまみれた。その敗因については多方面に考えられる所だが、それでも地方馬最先着は果たしており、ここでの評価を大きく下げることはない。トップクラスとしての評価は必要と判断し、5位に置くことにした。

不来方賞には道営3冠路線で主役を張ったブラックバトラーパッションクライも出走。前者は中団からジリジリと脚を伸ばして5着と好走し、後者は7着も2番手につける積極的な競馬で見せ場を作った。道営デビュー組のレベルの高さを改めて証明した格好で、2頭ともトップ10に名を連ねさせた。もっとも2頭の力関係は、今年ブラックバトラーの3勝1敗というほど、差はないと考えているが。

7位とした兵庫のオーシンロクゼロは、西日本クラシックでシンメデージーとマッチレースをした戦いを評価したもの。直後の兵庫優駿は大出遅れで惨敗してしまったが、この1戦は参考外。全国区で戦える素材は十分あるはずだ。そして兵庫優駿で2着に8馬身差をつけて制したマルカイグアスも、様々な相手・条件で結果を出していることから、次点でも名を入れる価値があると判断した。

8位としたウルトラノホシは、佐賀2冠を圧勝したことはもちろん、ダート統一グレードのブルーバードCであわやの4着という走りを評価したもの。9位のフークピグマリオンは2歳時から質の高いレースが多かった東海地区で、3冠を達成したことを評価した。一方で中央からの転入組が3歳戦線の主役を張った金沢所属馬は、ここで評価することはできなかった

次点には5頭の名前を挙げさせてもらったが、この中で唯一、牝馬としてニジイロハーピーを取り上げた。年明けから牝馬限定の地方全国交流重賞で3勝を挙げ、東海優駿でもあわやの3着を確保したことを評価したもの。ダート統一グレードの関東オークスで2着に入ったミスカッレーラ(船橋)と3着のグラインドアウト(高知)に、南関東牝馬路線で活躍した馬もいるが、1番となればこの馬ではと考えている。


by hirota-nobuki | 2024-09-17 18:00 | 競馬 | Comments(0)

地方競馬・ダート競馬の発展を願ってやまない博田伸樹(ヒロタ・ノブキ)です。この場を通じて地方競馬・ダート競馬により興味を持つ人が1人でも増えてほしいと願っています。 twitter:@HirotaNobuki


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