コラム 「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」2023発表-PART2 地方所属馬編
2024年 03月 29日
(注)レース名には、以下の距離区分の略号を付記しております(初回のみ。2歳部門除く)。
S-スプリント(1000~1300m)
M-マイル(1301~1899m)
I-インターミディエイト(1900~2100m)
L-ロング(2101~2700m)
・古馬勢2番手のスマイルウィは110。一方で105以上は3頭と、2017年以来の低水準
今年は昨年勝てなかった統一GⅠを、イグナイターがJBCスプリントを、ミックファイアがジャパンダートダービーを制し、ともに114の評価を獲得。ここではこの2頭以外について詳しく触れていくことにする。
まず古馬部門から紹介すると、さきたま杯(M)でイグナイターのクビ差2着となったスマイルウィに110の評価が与えられ、地方勢2番手となった。同馬は昨年も統一グレード未出走ながら104のレーティングを得ていたが、今年は6戦3勝2着3回と、南関東のスプリント・マイル路線で圧倒的なパフォーマンスを発揮。オーバルスプリント(M)2着でも109と、高い評価を得続けてきた。更にその上の評価を得るためには、統一グレードタイトルが是が非でも欲しい所。2024年はそれを目指して戦うことになる。
その次に評価されたのがライトウォーリア。昨年も東京大賞典5着で107を得ていたが、今年も帝王賞(I)6着で同じ107の評価を獲得。年間未勝利だが中長距離路線の統一グレードにおける健闘が報われたといえよう。
しかしその次は104まで離れており、イグナイターを含めて105以上は3頭だけ。これはやはり3頭(注)だった2017年以来の低水準である。100以上で見れば昨年から3頭減の19頭だから大きく減っていないが、高い評価を得られる可能性が高い統一グレード、特に中長距離路線にトップクラスが参戦する機会自体が少ない。自らの手で評価される機会を失っている現状を、示しているといえよう。
そこで104以下はかいつまんで紹介していくが、104には報知オールスターカップ(I)を勝ったエルデュクラージュらとともに、ゴールドホイヤーが入った。同馬は過去3年連続して102と、統一グレード好走歴がない馬としては長きにわたってランキングされてきたが、今年は京成盃グランドマイラーズ(M)でスマイルウィを破った1戦が高い評価を受け、自己ベストを更新した。
また南関東勢が大半を占める中、昨年ダービーグランプリを制して102だった道営所属のシルトプレが、コスモバルク記念(M)と道営記念(I)で昨年と同じ102を獲得。自身が今年、エルムステークス(M)と日本テレビ盃(M)でともに5着と好走したこともあり、地元のパフォーマンスが一定の評価を受けた。なお道営の古馬ローカル重賞が100以上の評価を得たのは、2019年のスーパーステション(赤レンガ記念の101)以来である。
同じ102には、牝馬として唯一100以上の評価を受けたスピーディキックも入った。これはスパーキングレディーカップ(M)2着によるものだが、これも昨年と同じ評価である。
(注)実際は4頭だったが、所属は年間最終出走時で掲載されるため、中央在籍時に出走した競走で105以上の評価を受けた1頭が含まれていた。
・3歳部門は南関東ナンバー2のヒーローコールに106。ユメノホノオは、高知生え抜きとして史上初の100以上獲得
3歳部門は100以上の評価を得た馬が昨年より2頭減の7頭だったが、多くの地区から高い評価を得た馬が登場し、賑やかなランキングになった。それだけ各地で質の高いレースが行われたともいえるが、実力馬が集中せず、1強状態の地区が多かったことも背景にあるだろう。それでも間違いなくいえるのは、ミックファイアやマンダリンヒーロー以外にも、歴史的な評価が続出した世代だということだ。
ここで最初に紹介したいのはヒーローコール。羽田盃と東京ダービーでミックファイアに大きく離された2着に終わったものの、南関東3歳戦線で重賞3勝。どれだけの評価が出るか楽しみだったが、黒潮盃(M)と戸塚記念(I)で106の評価を獲得した。これは3歳3冠路線以外の南関東の3歳限定重賞としては、過去最高となった。
ここで気になるのは、3勝した重賞全てで2着だったマンダリンヒーローとの兼ね合いだ。サンタアニタダービー(M)2着で得た112が無視されているのは間違いなさそうだが、マンダリンヒーローが国内で手にしたレーティングは、ヒーローコールが出走しなかったダービーグランプリ(I)2着時の103(推定)とみられる。そこと整合性を得るために、ヒーローコールの数字が決まった可能性は指摘しておきたい。
そして102には道営3歳3冠を達成したベルピットが入った。この評価を得る上で大きかったのは、ダービーグランプリで3着に入ったこと。110以上を持つミックファイア・マンダリンヒーローと直接戦い、この2頭に迫る走りをしたことが決め手だった。事実、上半期終了時に公表された北斗盃(M)は100だったが、最終的に102に上方修正。3冠最終戦の王冠賞(M)も102となり、ダービーグランプリを含む3競走で102を獲得。ハイレベルの走りをしたことが、レーティングの上でも認められた。
そして高知3歳3冠を達成したユメノホノオにも、101の評価が与えられた。対象となった高知優駿(I)を大差勝ちした上で、2着ポリゴンウェイブが南関東重賞2勝の実績馬だったことが、この評価を得る大きな理由となった。高知所属の3歳馬が100以上の評価を得たことはもちろん、高知生え抜きで100以上の評価を得た馬も史上初。高知競馬隆盛を象徴する、歴史的な評価といえるだろう。
牝馬では南関東で3歳牝馬重賞を2勝したメイドイットマムが、関東オークス(I)4着で100を得たのが唯一のランキング入り。地方馬では他に、ダービーグランプリ4着のサページが101で名前が載った。
・2歳部門は史上初の100以上不在。本当にレベルが低かったのか?
最後に2歳部門を振り返るが、初めてこの部門で100以上の評価を得た地方所属馬が現れなかった。ダート統一グレードに限ってみれば、エーデルワイス賞を勝ったモズミギカタアガリは99止まり。牡馬勢も全日本2歳優駿3着だったサントノーレが94となり、このような結果となった。
その背景にはフォーエバーヤングの全日本2歳優駿に象徴されるように、中央勢が他を圧倒するパフォーマンスを見せたため、負けた組が評価されなかったのが1番の理由。だが本当にレベルが低かったとは、言い切れないところもある。それは地方馬同士の戦いでは、エーデルワイス賞とほぼ同等のレーティングが出る東京2歳優駿牝馬を除けば、余程他を圧倒する走りを見せないと見向きもされないため。しかもそういった形で名前に載ったと思われるのは、2014年に100の評価を得た岩手のロールボヌール以降、見当たらないのが現実だ。今年から各地でネクストスター競走が始まったこともあり、2歳戦を見逃さない姿勢を今まで以上に求めたいと思う。
・“100未満は非公表”は、もう通用しない。NARはレーティングの積極的な公開を
ここで唐突に中央競馬の話をさせていただくが、JRAのオフィシャルサイトにおいて、出走表や各馬の出走履歴にレーティング対象競走出走時のレーティングが2021年から掲載されているのをご存知だろうか。実はこれに関連して驚くべき情報が明らかになったのだが、今年のジャパンカップに園田から参戦したチェスナットコートとクリノメガミエースについて、一部地方ローカル重賞出走時のレーティングが掲載(公表)されていたのである。
もちろん公表された競走で、100以上のレーティングを獲得した馬は両馬を含めていない。ただクリノメガミエースが4着で86とされた兵庫クイーンカップ(M)から、勝ったハクサンアマゾネスのレーティングを推定すると97。今年、地方競馬の平地重賞最多勝利記録を更新したハクサンアマゾネスの力量をレーティングで知る機会がなかったが、思わぬ形で明らかになったといえるだろう。
そして2024年2月のフェブラリーステークスに出走した地方馬に関しても同様に明らかになり、本来なら歴史の闇に葬られた可能性があった、高いレーティングが与えられた地方ローカル重賞の実態も一部明らかにした。例えばミックファイアの羽田盃(M)に与えられた評価は110。実はジャパンダートダービー時のプレレーティングは、東京ダービー(I)のみに110とされていたため、この時点では羽田盃は109以下の扱い。もし中央遠征がなかったら羽田盃の最終的な評価はもちろん、当初より変更されたことも知ることが出来なかったのだ。
同様にイグナイターについても取り上げると、黒潮スプリンターズカップ(S)を勝った際のレーティングは107。昨年同レースを勝った際にどうだったか微妙だが、これが高知で行われた地方ローカル重賞として初めて勝ち馬に100以上の評価が与えられた競走である可能性が高い。これは単に強い馬を評価するだけでなく、どれだけの走りができればレーティングの対象となるか、各主催者の厩舎関係者への道標としても意味を持つのではないだろうか。
現在、あらゆるスポーツで実績が数値化され、それが世界ランキングという指標となってアスリート(国を含む)を評価している。そしてそれがビッグイベントの出場権を決める材料の1つになっているように、競馬界におけるレーティングも出走馬決定の材料となっている以上、レベルの高い競走に関する情報を積極的に開示するのは当然の話ではないか。だからそういった情報が公にならない可能性がある地方競馬の現状に、深い憂慮を持っている。
確かに全ての地方ローカル重賞を公にするのは、ともすれば全ての現役競走馬をランク付けするようなものになるため、現実的ではない。ただ以下の条件に合致するレベルが高かった競走は、即時(遅くともレース翌月までに)公開を強く求めたい。それが地方競馬のステイタス向上にもつながると、私は考えている。
<即時レーティング公開を求めたい、地方ローカル重賞の条件>
1.1着馬に100以上のレーティングが与えられた競走(理想は95以上)
2.前年1月1日以降(または直近1年以内)に100以上のレーティングが与えられた馬が、4着以内に入った競走
3.前年、もしくは直近3年で2回以上、1着馬に100以上のレーティングが与えられた競走(競走条件や時期に大幅な変更があった場合は除く)
(参考)勝ち馬が100以上の評価を得た地方重賞一覧
今年も昨年同様、統一グレード以外の地方重賞で、勝ち馬が100以上の評価を得た競走の一覧化を行った。地方重賞でランキングされた馬の評価や、統一GⅠ競走の前に公表されるプレレーティングなどに加え、統一グレードなどで高いレーティングを手にした馬が勝った競走の一部を、競走名に※印で示す形で追加した。なお※印の競走におけるレーティングは、理論上考えられる最高値。実際は100以下も含め、それより低いと推測される。
この他、レーティングの数字に●印がついている競走は、2着以下でランキングされた馬の評価を基にした推定値。同様に★印がついている競走はプレレーティングまたは上半期終了時に公表された数値で、後に修正された可能性があることを意味している。
左から「競走名」(距離区分)-レーティング(優勝馬)
(掲載順はレーティングが高い順で、同一の場合は施行日順)
★2歳
なし
★3歳
羽田盃(M)-110(ミックファイア)
東京ダービー(I)-110(ミックファイア)
黒潮盃(M)-106(ヒーローコール)
戸塚記念(I)-106(ヒーローコール)
ダービーグランプリ(I)-105(ミックファイア)
雲取賞(M)-102★(ヒーローコール)
北斗盃(M)-102(ベルピット)
王冠賞(M)-102(ベルピット)
高知優駿(I)-101(ユメノホノオ)
★古馬
黒潮スプリンターズカップ(S)-107(イグナイター)
スパーキングサマーカップ※(M)-106(スマイルウィ)
マイルグランプリ※(M)-106(スマイルウィ)
報知オールスターカップ(I)-104(エルデュクラージュ)
京成盃グランドマイラーズ(M)-104(ゴールドホイヤー)
報知グランプリカップ(M)-103(ギガキング)
ブリリアントカップ(M)-103(ランリョウオー)
フリオーソレジェンドカップ(M)-103(ギガキング)
金盃(L)-102(カイル)
コスモバルク記念(M)-102(シルトプレ)
大井記念(I)-102(セイカメテオポリス)
東京記念(L)-102(セイカメテオポリス)
アフター5スター賞(S)※-102(ギシギシ)
園田チャレンジカップ(M)-102(イグナイター)
道営記念(I)-102(シルトプレ)
ゴールドカップ(M)-102●(スマイルウィ)
オグリキャップ記念※(L)-101(セイカメテオポリス)
道営スプリント(S)※-101(スティールペガサス)
フジノウェーブ記念(M)-100(ギャルダル)
埼玉新聞栄冠賞(I)-100(ジョエル)
