コラム 「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」2023発表-PART1 トップランカー編
2024年 03月 28日
先日発表された2023年の「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」では、競走馬ではイクイノックスが、レースではジャパンカップが世界ナンバー1に認定され、日本競馬が世界に高く評価された1年として記録されることになった。その一方で猫も杓子も日本調教馬が海外を目指す中で、日本国内の空洞化を危惧する声も年々高まっている。とりわけ高額賞金レースが海外に多く、国内ではともすれば正当に評価されていないダート競馬に関しては、その危機感は極めて大きい。2024年に本格スタートする、3歳ダート3冠をはじめとする新ダート競馬体系整備には、その意識も少なからずあったはず。それがどんな影響を与えるのか、じっくりと確かめなければいけないと思っている。
例年より遅くなってしまいましたが、国内向けに発表される「JPNサラブレッドランキング」のダート部門について、今年も個人的な考察を加えながらコラムをまとめました。例年同様、統一GⅠ優勝馬を中心とした“トップランカー編”と、地方所属馬にスポットを当てた“地方所属馬編”に分けて紹介していきます。
<おことわり>
本文中の“今年”は2023年を、“昨年”は2022年を示します。またレース名には、以下の距離区分の略号を付記します(初回のみ。2歳部門除く)。
S-スプリント(1000~1300m)
M-マイル(1301~1899m)
I-インターミディエイト(1900~2100m)
L-ロング(2101~2700m)
・ドバイワールドCを制したウシュバテソーロは122。ブリーダーズカップクラシック2着のデルマソトガケは、3歳馬として史上2頭目の120獲得
今年も冒頭では、海外のダート競馬でベストパフォーマンスを披露した馬をまとめて紹介する。何といってもドバイワールドカップ(Ⅰ)を制したウシュバテソーロの評価が気になる所だが、そこで122の評価を獲得した。昨年惜しい3着だったチュウワウィザードが117だったことを考えればこの辺りが妥当な所だろうが、国内外で見せたパフォーマンスを見ていると、もっと高い評価を得てもと考えるのは判官贔屓だろうか。なお国内での最高は、統一GⅠ2競走を差し置いて、日本テレビ盃(M)における118。他馬より2キロ重い斤量を背負っていたこともあり、この評価となった。
そのウシュバテソーロが唯一敗れたブリーダーズカップクラシック(I)で、これに先着して2着に好走したデルマソトガケは120の評価を得た。同馬はUAEダービー(I)を制した際に120(追記・レース直後は118で、後に修正)の評価を得ていたが、昨年同競走を制したクラウンプライドが110だったことを考えれば、早い段階から高い評価を受けていたことになる。なおこの数字は、2001年にクロフネが125を得て以来、史上2頭目となる3歳馬による120以上であった。
同じ120には、サウジカップ(M)を逃げ切ったパンサラッサもいる。同馬は芝を主戦場にしていて、昨年芝で120の評価を得ていたので、それに引っ張られて得た格好の評価。レース内容も含め、現実的には大きく割り引く必要があると考えている。
勝った馬の評価にこだわれば、韓国の国際競走で圧勝した2頭にも高い評価を得た。コリアカップ(M)で117を得たクラウンプライドは、帝王賞2着を上回る評価。そしてコリアスプリント(S)を制したリメイクの114は、スプリントカテゴリにおける最上位の評価を得ている。なおリメイクは国内でも、圧勝したクラスターC(S)で114の評価を獲得している。
敗れた馬でも高い評価を得た馬は数多く、117となったカフェファラオとジオグリフはサウジCの、同じく117のテーオーケインズはドバイワールドCの上位入着で、この評価を得た。さらに地方所属馬として初めてアメリカ遠征を果たしたマンダリンヒーローが、サンタアニタダービー(M)2着で112の評価を得たことも特筆される。
・国内最高評価は、統一GⅠ3勝のレディポップ。マイルチャンピオンシップ南部杯で、国内史上3頭目の120獲得
ここからは国内ダート競馬の評価に移るが、今年国内で最も高い評価を得たのは国内統一GⅠ3勝を挙げたレディポップだった。何といってもマイルチャンピオンシップ南部杯(M)で大差勝ちをしたことが大きく、この競走で国内史上3頭目となる120の評価を得た。
着差がレーティングに半ば機械的に反映される現行のルールでは、大きな着差をつければつけるほど評価が高くなるため、これに見合う地力があるかは議論すべきだろう。ただこの1戦に限れば、この時2着だったイグナイターが直後にJBCスプリントを制したことで、レースの質という面では一定の評価ができるのも確か。そういう意味でレースの質を加味したい私のような立場では、評価しにくい存在であることは申し添えておきたい。
余談だが、マイルチャンピオンシップ南部杯でイグナイターにつけた時計差は2.0秒。これを馬身で表示するなら12馬身相当になる。だが地方競馬では、中央競馬と同じ1秒=6馬身の基準で着差を算出しているのは岩手県と兵庫県のみ。その他の主催者は1秒=5馬身で算出しているため、もし南関東などであれば10馬身差として発表された可能性がある。これがレーティングを決める上で左右されるのかわからないが、この基準は国内でしっかり統一してほしいものである。
・国内2位はJBCクラシック覇者のキングズソードの118。春に統一GⅠ2勝のメイショウハリオは、昨年を上回る117も
レモンポップに象徴されるように、今年は圧倒的な着差をつけて勝った経験のある馬が高い評価を得るケースが目立った。その象徴的な評価が、JBCクラシック(I)で2着に4馬身差をつけて制したキングズソードが118を手にしたことである。初の統一グレードタイトルを国内最高峰の舞台で手にしたことは称賛に値するが、大きな着差をつけたにせよ、1発でこれだけの評価を与えたことに疑問を持っている。特にこの時は、舞台となった大井競馬場の砂が入れ替えられた直後で、慎重な評価も必要だったはず。必要以上に高いレーティングを与えられた気がしている。
そう思うのは帝王賞(Ⅰ)をレース史上初めて連覇したメイショウハリオが、これを下回る117に止まったことだ。メンバーの質という意味でも、レースの質という意味でも、2023年のダート統一グレードベストレースを選ぶなら間違いなく帝王賞。ただし接戦となったために勝ち馬に突き抜けた評価を与えることが出来ず、評価が抑えられてしまった。メイショウハリオ自身は昨年の115より上積みできているが、その前にかしわ記念(M)を制していたことも含め、評価が抑えられた印象は拭えないところだ。
115にはチャンピオンズCと東京大賞典でともに2着に入ったウィルソンテソーロと、ダイオライト記念(L)と平安ステークス(I)を圧勝したグロリアムンディが入った。これを含め、国内の競走がベストパフォーマンスと評価された馬で、115以上の評価を得たのは5頭。海外で評価された7頭を含め、115以上は史上最多となる12頭が名を連ねた。
・アイコンテーラーが勝ったJBCレディスクラシックは、牝馬限定統一グレード史上最高評価。JBCスプリントを制したイグナイターも、レース史上最高タイ
短距離路線(ここでは1400m以下の競走)では、JBCスプリント(S)を制したイグナイターが114の評価を獲得した。これはレース史上最高タイの評価だったが、昨年海外で同カテゴリ国内史上最高となる117を獲得したダンシングプリンスでも、昨年JBCスプリントを制した時の評価は114。その1戦と横並びという評価は、少しもらい過ぎと私には映る。
ただ2着に破ったリメイクが、前述したようにクラスターCとコリアスプリントで114の評価を得たことは無関係ではないだろう。同カテゴリ最高峰の1戦で直接破った相手より低い評価にできないことは確かだが、実はJBCスプリントのプレレーティングにおけるリメイクの評価は113だった。これがイグナイターを単独トップとしたくなかった、あるいはイグナイターの数字まで引き上げたとするなら、過去の名馬に対して失礼ではないだろうか。
これに次ぐ112には、黒船賞(M)を勝ったシャマルと、東京盃(S)をレコード勝ちしたドンフランキーが入った。シャマルは一見昨年と同じ評価だが、この時はマイルチャンピオンシップ南部杯3着時のもので、短距離路線に限れば109が最高。実質的には評価を上げたといえそうだ。またドンフランキーは、東京盃が最大限評価されたことに加え、短距離路線の中核を担ったリュウノユキナを破った点も評価されている。
そのリュウノユキナは、今年も東京スプリント(S)を連覇するなど活躍を続けたが、昨年の112より2ポイント低い110に止まった。これと同じ110には、カペラS(S)を勝ったケイアイトッキュウに加え、ケイアイドリー(兵庫ゴールドトロフィー(M)2着)とスマイルウィ(さきたま杯(M)2着)も名を連ねている。なおスマイルウィに関しては、地方所属馬編で改めて触れることにする。
一方で牝馬路線は、年間を通じてハイレベルの戦いが繰り広げられた。その頂点を争ったJBCレディスクラシック(M)を制したアイコンテーラーに与えられた評価は111。これは牝馬限定ダート統一グレードにおける史上最高評価である。何より牝馬限定戦における110以上は、2013年のJBCレディスクラシックを制したメーデイア以来。牝馬限定戦の評価が上がらないことを毎年のように嘆いていただけに、ようやく実態にふさわしい評価が出たと感じている。
確かにダート路線で確固たる地位を築いてきた馬ではなく、ダート3戦目でこの評価を得たことに寂しさはある。ただし勝ち馬に4馬身差をつけたことに加え、2着だったグランブリッジがエンプレス杯(I)を勝った際のプレレーティングで110の評価を得ていたことを考えれば、この数字は納得できるものだ。
しかしそのグランブリッジのエンプレス杯は、最終的に109に引き下げられてしまった。もしプレレーティング通り確定していれば、この1戦が10年ぶりの牝馬限定戦における110以上だった。昨年まで評価を押し下げていたことを正当化するかのような扱いといえ、正直残念でならない。
この2頭に次ぐ107には、エンプレス杯2着だったヴァレーデラルナと、根岸ステークス(M)2着のギルデッドミラーが入った。ヴァレーデラルナはJBCレディスクラシックを制した昨年の108より評価を落とした形。ギルデッドミラーは、昨年武蔵野Sを勝った時と同じ評価となった。今年はギルデッドミラーだけでなく、牡馬相手に好走した牝馬が非常に目立った1年。その時の結果がレーティングとして形になった馬はほとんどいなかったが、その点でも牝馬戦線が活況を呈したことを証明していたと思う。
・無傷の南関東3歳3冠馬ミックファイアは114。全日本2歳優駿を制したフォーエバーヤングは、2歳馬史上最高を大幅に上回る113を獲得
ここでは世代別の評価を紹介する。3歳部門では無傷の南関東3歳3冠を達成したミックファイアの評価に注目が集まったが、ジャパンダートダービー(Ⅰ)制覇による114となった。これは2019年に制したクリソベリルの113を上回るレース史上最高評価だが、レース直後に発表された数字は115。しかし正式に115以上の評価を得るには、国際会議の場で認められなければいけないため、東京大賞典8着を受けてそれが認められなかった可能性もある。個人的にはもっと高い評価をもらっていいパフォーマンスだったと考えているが、それでも2004年のアジュディミツオーと並ぶ、地方所属の3歳馬による最高タイ。地方所属馬にとっては歴史的な評価だと思っている。
同じ114には、チャンピオンズカップと東京大賞典でともに3着に入ったドゥラエレーデも名を連ねた。昨年芝で114の評価を得ているので違和感がない人もいるだろうが、今回ダートで得た数字は他馬に引っ張られたもの。ダートで勝利を挙げた時に、この数字を得られる保証はないと考えている。
また春には間に合わなかったセラフィックコールが、無敗で古馬相手にみやこステークス(M)を勝って113の評価を得た。今年は春の実績馬が古馬相手に結果を残せなかったことから、世代レベルを疑問視する声もあるが、春に間に合わなかった素質馬も少なくないというのが正解だろう。そうでなければ100以上の評価を得た3歳馬が、2018年の33頭を上回る、歴代最多の39頭まで伸びない。質量ともに豊富な世代と評価していいと考えている。
最後に紹介する2歳部門は、JBC2歳優駿と全日本2歳優駿を連勝したフォーエバーヤングが、全日本2歳優駿において113の評価が与えられた。これは2017年にルヴァンスレーヴが得た111を一気に2ポイント上回る、2歳史上最高評価。兵庫ジュニアグランプリ勝利時に107を得ていたイーグルノワールを7馬身千切ってしまったのだから、これでも評価しきれているのか疑問を感じるほど。既に2024年はサウジダービーを制し、期待が膨らんでいるが、それに応えた先にどんな評価が待っているのか今から胸が高鳴っている。
一方で100以上の評価を得た2歳馬は、昨年より4頭減の7頭に止まった。JBC2歳優駿2着で104だったサンライズジパングが芝で109の評価を得たため、実質8頭だが、この背景については地方所属馬編でも触れることにする。
<博田伸樹による、統一GⅠレーティング>
昨年に引き続き、今年も統一GⅠ各競走の個人レーティングを示すことにした。記事だけでは伝え切れない、各競走の評価を知っていただく機会にしていただきたいと思う。また可能であれば、昨年各競走および優勝馬にどんな評価を私がしたかも振り返っていただければ幸いだ。なお個人レーティングに上下の矢印をつけているケースは、それぞれ1ポイント上下させることも考えたことを意味している。またマイルチャンピオンシップ南部杯のレモンポップに対しては“?”を付したが、これは上下いずれも検討したことを示したものである。
左から「競走名」(距離区分)優勝馬-公式レーティング<個人レーティング>
「川崎記念」(I)ウシュバテソーロ-117<118↑>
「フェブラリーステークス」(M)レモンポップ-117<115↑>
「かしわ記念」(M)メイショウハリオ-112<113>
「帝王賞」(I)メイショウハリオ-117<118↑>
「ジャパンダートダービー」(3歳I)ミックファイア-114<116>
「マイルチャンピオンシップ南部杯」(M)レモンポップ-120<120?>
「JBCレディスクラシック」(M)アイコンテーラー-111<111>
「JBCスプリント」(S)イグナイター-114<113>
「JBCクラシック」(I)キングズソード-118<117↓>
「チャンピオンズカップ」(M)レモンポップ-118<115↓>
「全日本2歳優駿」(2歳)フォーエバーヤング-113<114>
「東京大賞典」(I)ウシュバテソーロ-116<117>
PART2の地方所属馬編は、明日掲載します。
