盛岡「マイルチャンピオンシップ南部杯」全頭解説(2023年10月9日 18:15発走)
2023年 10月 08日
この競走に刻まれている“南部”とは、かつてこの地を治めていた南部家に由来しており、当主の方が毎年表彰式のプレゼンターとして登壇されている。その表彰式に於いて一時期、当主の方が馬車に乗ってウィナーズサークルに向かう演出が行われたことがある。その光景を私は現場で目の当たりにしたのだが、その優雅さと高貴さが伝わる、素晴らしい演出だったと私は思っている。翻って今年の東京優駿の表彰式で、優勝馬の関係者が馬車に乗ってファンの前に登場する演出が行われたが、写真1枚で滑稽さを感じたのは何故だろうか。それは馬が地域文化に根差す中で発展してきた岩手競馬と、それを表面的な部分だけ利用しようとするJRAの、文化水準の違いではなかったか。喝采を浴びるはずの関係者が、好奇の目にさらされたように映ったことを不憫に感じてならない。
予想活動を行わなくなってから恒例となっている、マイルチャンピオンシップ南部杯の全頭解説を今年も行います。皆様が予想をされる上で参考になれば幸いです。
<お知らせ>
15日ごろまでを目処に、11月3日に行われるJBC(ジャパン・ブリーディングファームズ・カップ)における、統一GⅠ3競走の概況を順次掲載いたします。
盛岡競馬12レース「第36回 マイルチャンピオンシップ南部杯」
(古馬・JpnⅠ・1600m)
<全頭解説>
(1)番 タガノビューティー(中央)
統一グレードタイトルこそないものの、今年のかしわ記念でクビ差2着に入るなど、トップクラスと互角の勝負をしている。前走プロキオンSではレース後に鞍上が下馬して心配させたが、結果は異状なし。その影響が残っていないなら、十分戦えるはずだ。
(2)番 カフェファラオ(中央)
昨年このレースを制してからは結果を残していないが、この馬に合う舞台で戦っていない。それなら巻き返し必至で連覇の可能性も十分あるが、ポイントは地元の高松亮騎手を鞍上に迎えたこと。彼にとって騎手人生最大の試練といえる舞台で、勝利に導けるだろうか。
(3)番 レモンポップ(中央)
今年のフェブラリーSを含め、全8勝を東京コースで挙げている、無類の東京巧者。ところがそれ以外の競馬場では未勝利で、いくら東京と親和性があるとされる盛岡コースでも不安感はある。3月以来の休み明けでこのレースを勝った馬がいない点も、不安材料だ。
(4)番 ゴールデンヒーラー(岩手県)
昨年このレースで5着に入り、地元ファンを大いに沸かせた。今年は春先に波に乗れなかったが、昨年同様青藍賞を強い競馬で制して、ここに駒を進めてきた。2年連続の掲示板、あるいはそれ以上の結果に向け、色気を持って戦ってほしいものだ。
(5)番 ハクシンパーソナル(岩手県)
今期岩手に転入後、ここまで5勝。うち2勝はA級昇級後に挙げており、岩手の水が合っているのだろう。ただし転入前の南関東ではC1級止まりで、しかも今回が重賞初出走。今までと戦う相手が違いすぎるため、静観が妥当ではないだろうか。
(6)番 レディバグ(中央)
中央所属の牝馬参戦は、実に2010年以来(盛岡開催に限る)。統一グレードの実績は牝馬限定戦中心も、初タイトルのスパーキングレディーCで競り勝った相手がスピーディキックなら、力が足りないとはいえない。爪痕を残す走りは、この相手でもできそうである。
(7)番 ノットゥルノ(中央)
昨年の東京大賞典2着で飛躍が期待された今年、3戦全て大敗。特に前走帝王賞の8着は、結果を残していた大井コースだっただけに、結果を残したかったはずだ。目先を変える意味で初めてマイル戦に投入される今回は、きっかけを掴みたい1戦である。
(8)番 ソリストサンダー(大井)
かしわ記念で2度の2着。このレースでも一昨年に3着がある、トップマイラーの1頭。今回は南関東に移籍しての出走だが、転入初戦だった前走は明らかにここに向けた叩き台。そこに吉原寛人騎手を鞍上に迎えたのは、勝利を意識した選択に映るのだが。
(9)番 ジオグリフ(中央)
皐月賞制覇など芝では輝かしい実績を残しているが、ダートは国内では未経験。海外ではサウジC4着があることから、国内でも使おうという話になったのだろうが、初ダートに近い形で統一GⅠを戦えるほど甘くはない。マイルも少し忙しい気がする。
(10)番 デンコウリシエール(中央)
OP特別2勝の実績はあるが、統一グレードでは根岸S8着にサマーチャンピオン4着と、結果を出したとはいえない。また主戦場も1400m以下で、マイル以上は3回走って全て着外。急遽の繰り上がりも含め、厳しい戦いになりそうである。
(11)番 アルサトワ(岩手県)
芝を求めて7月に岩手に来た馬。しかし初ダートだった今年の名古屋大賞典4着なら、勝ったハギノアレグリアスのその後の活躍を考えれば、無下にはできないかも。それでも現実的な目標は、地元最先着となるだろうが・・・。
(12)番 イグナイター(兵庫県)
今年のさきたま杯で統一グレード3勝目を挙げた、地方のエース。昨年参戦した際も勝ち馬から0.2秒差の4着と好走しており、盛岡コースの適性も高い。地元で1度使ってきた臨戦過程も好感が持て、悲願の統一GⅠ奪取に向けて舞台は整ったのではないか。
(13)番 レールガン(岩手県)
2年前に参戦した際は、勝ち馬から3.5秒差つけられた大敗。その後はA級とB1級を行ったり来たりの状況で、そもそもベストは重賞でも好走した経験がある長距離戦。取消明けで状態面にも疑問符が付くことから、1頭でも多く負かすのが目標になる。
(14)番 ボウトロイ(岩手県)
A級で戦っている今期は4勝をあげたものの、前々走の準重賞は7着。前走中央1000万下交流も8着と、少し強くなっただけで壁に当たってしまった。それ以上に手強いこの相手では、出走枠を埋める以上の役目はないだろう。
(詳細な出走表は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)
1着 (3)番 レモンポップ(1番人気)
2着 (12)番 イグナイター(4番人気)
3着 (6)番 レディバグ(7番人気)
レモンポップ・・・他の馬が行くそぶりを見せなかった上に、好枠を引いていたことで自然とハナに。逃げ馬が2着に粘った近3年の前半1000mで、最も遅かったのが58.8秒(2012年)だったところ、今日はそれより遅い59.1秒。それでいて4角手前から2番手以降が置いて行かれたのだから、スピードの絶対値の違いだけで圧倒した1戦だった。それにしても2着を2秒(約12馬身。岩手競馬は1秒=6馬身)千切る大差勝ちは多分、古馬統一GⅠにおける最大着差。今後どんな舞台を選ぶのか、気になる所だ。
レディバグ・・・逃げ馬を見る位置で流れに乗ると、直線で力強く伸びてイグナイターを追い詰めた。統一グレードタイトルを手にして充実期にあるのは確かで、今後の方向性という意味で色気を出したくなったかも。一方で3着以下の各馬は力を出し切れなかったか、あるいはレベル的に問題があった可能性は指摘すべきかもしれない。
カフェファラオ(5着)・・・地方の馬場では大きく崩れる傾向はこれまでもあったが、直線で伸びあぐねた姿に、前年覇者の風格は見られなかった。今思えば高松亮騎手の起用には、中央所属騎手の起用をためらうような、何らかの理由があったのかもしれない。
