盛岡「ダービーグランプリ」全頭解説(2023年10月1日 18:15発走)
2023年 09月 30日
“ダービー馬の中のダービー馬”というコンセプトとともに1986年に創設されたダービーグランプリは、岩手競馬(岩手県競馬組合)の隆盛を、番組面で象徴する競走だったと思う。そのもう1つの象徴である、1996年の新盛岡競馬場(オーロパーク)開場初年度にデビューしたメイセイオペラが国内ダート競馬の頂点に立った時、その栄華は永遠に続くと思っていた人は少なくなかっただろう。
しかしメイセイオペラの栄光から10年と経たず経営危機に陥った岩手競馬は、統一GⅠに発展していたダービーグランプリを2008年に休止。その後創設当初のコンセプトに近い形で2010年に復活したものの、その歴史は今回で終止符が打たれることになった。
確かに栄枯盛衰とひと言でいってしまえば、それまでかもしれない。しかし時代を先取りしてきた岩手競馬が、いざ時代の要請を受けた時にその力を失っていたことに対する無念は、岩手競馬に関わった皆が抱いているはずだ。そして私自身も岩手競馬の歴史研究に携わった1人として想いを共にするとともに、自らの力不足を申し訳なく思う。だからこそダービーグランプリの歴史は、永遠に語り継がなければいけない競走だと叫びたい。
ここではダービーグランプリに出走する全頭の解説を行います。なお今回は、これまでに手にした最高のレーティング(公表分のみ)を、その競走と併せて掲載しました。個人的な印やレース全体の見解は明らかにしませんが、皆様が予想をされる上で参考になれば幸いです。
盛岡競馬11レース「第36回 ダービーグランプリ」
(3歳・地方全国交流重賞・2000m)
固定されていたのは3歳限定の2000m戦というだけで、時期や出走資格などはかなり変動があった。それでも禁止薬物騒動で当初より約1ヶ月延期された2018年を除き、10頭以上の頭数で争われてきたのは、全国の関係者がこの舞台に立つことに名誉を感じていたからだと思う。それだけに今年、史上最少の7頭立てとなったのは確かに寂しい。だが今年、統一GⅠとして行われていた時代を含め、史上最強といえるメンバーが揃ったことは、ダービーグランプリという競走に対する1つの評価なのかもしれない。
1番 ベルピット(北海道)(100-JBC2歳優駿・北斗盃)
2歳時からJBC2歳優駿2着など、ホッカイドウ競馬で世代を牽引してきたが、年が明けた今年、道営3冠を制して更にスケールアップを果たした。特に北海優駿は、東京ダービーよりも速いラップを刻んだ逃げ馬を自ら潰しに行って押し切る、迫力満点の競馬。そのパワフルな走りが速い時計が出る盛岡の馬場でも発揮されるなら、昨年のシルトプレに続くホッカイドウ競馬勢の制覇があっても驚かない。
2番 ルーンファクター(岩手県)
岩手転入初戦となるやまびこ賞で最後方からの追い込みを決めると、不来方賞では岩手3冠がかかっていたミニアチュールを早目の勝負を仕掛けてねじ伏せ、一気に頂点に駆け上がった。振り返れば南関東時代にミックファイアの3着があり、その素質が岩手で開花したというべきか。今回は地元の期待を一身に集めるが、見せ場を作るためには2分4~5秒台で走れる伸びしろが、残っているがどうかだろう。
3番 タイガーチャージ(大井)
早くから素質馬として期待されていたが、重賞になると入着ラインに止まっていた馬。なので前走戸塚記念3着は、ひとつ殻を破った1戦にできたが、前2頭から大きく離された現実からも目を背けられない。それでも前走は初の左回りだったことを考えれば、サウスポーの香りがないとも言えないか。裏を返せばそこに一縷の望みを託す格好ともいえるけれど・・・。
4番 ニシケンボブ(北海道)
3冠路線では全てベルピットの2着。北斗盃で7馬身差、北海優駿は3馬身差、王冠賞も5馬身差つけられたことからもわかるように完敗だが、古馬A級相手に2戦2勝なら、地力は確かだ。そもそも馬券圏内を外したのは、デビュー2戦目と統一GⅠの全日本2歳優駿だけ。唯一の重賞タイトルを笠松で手にしていることからも、条件不問で力を出せることは強みといえよう。
5番 サページ(大井)
気性面で課題を抱えていることもあり、最後方からのロングスパートを武器に戦っている馬。それでも京浜盃で差し切り勝ちを収めると、羽田盃3着に東京ダービー4着と、3冠路線でも好走してきた。戦い方は簡単に変えられないはずなので、捌きやすい小頭数になることは間違いなくプラス。一方で東京ダービー以来というローテーションには、不安感を拭えないのは確かだ。
6番 マンダリンヒーロー(大井)(113-サンタアニタダービー)
サンタアニタダービーで2着に入り、ケンタッキーダービーにも駒を進めたことは、地方競馬関係者に大きな希望を与えたと思う。だが国内での戦いは、今年3戦全てヒーローコールの2着と、厳しい結果が続いている。ただアメリカで結果を出したことは、それに最も近い盛岡の馬場に対する適性は高いのでは。手変わりが続いていた中で、吉原寛人騎手との新コンビがどうなるかも注目だ。
7番 ミックファイア(大井)(114-ジャパンダートダービー)
統一GⅠのジャパンダートダービーを含む南関東3冠を無敗で制したことは、改めて説明するまでもないだろう。今回の遠征は左回りを経験させるという意味合いがあるが、広い盛岡なら過度に心配することはないだろうし、普段外厩の坂路で調整されているので坂もこなせるはず。もし課題があるなら、競った競馬を経験していないこと。そういう相手がいた時に、誰も気が付いていない落とし穴がないとは言い切れない気がする。
(詳細な出走表は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)
1着 (7)番 ミックファイア(1番人気)
2着 (6)番 マンダリンヒーロー(3番人気)
3着 (1)番 ベルピット(2番人気)
ミックファイア・・・他に行く馬がいないとみて逃げの手に。道中はマイペースで進めたが、3角で外からマンダリンヒーローが迫った際の手応えは、相手が上回っていた印象はあった。それでもラスト1ハロンで突き放し、無傷の7連勝でダービーグランプリの歴史を締めくくった。2着につけた着差は今までで最も小さかったが、これは長距離遠征など様々な課題があった1戦で、安全に勝とうとした部分もあろう。使って更に良くなりそうな雰囲気で、次走地元に戻るJBCクラシックは更に迫力ある走りを見せてくれるはずだ。
ベルピット・・・一言で済ましてしまえばスタートの出遅れが全て。これで道中流れに乗れなくなり、勝負所で先行馬に追いつくまでに脚を使い切ってしまった。最後も前を捉えるというよりは何とか3着を守った印象で、互角のスタートを切って流れに乗れていたらと思わずにはいられない。悔いが残る1戦になってしまった。
サページ(4着)・・・1頭だけ大きく離された最後方から末脚に賭けたが、いかんせん前から離されすぎた。これが自分の競馬といえばそれまでだが、この頭数なら同じ最後方でも離されずに戦えたのでは。長く良い脚を使ってあわやの所まで追い込んだだけに、勿体ないと感じたのは私だけではないだろう。
