大井「帝王賞」全頭解説(2023年6月28日 20:10発走)
2023年 06月 27日
ウシュバテソーロによるドバイワールドカップ制覇から3ヶ月。その後もケンタッキーダービーに日本調教馬が複数参戦したこともあり、ダート競馬に対する注目度は確実に高まっている。ただその視線は外へ向いているのも確かで、国内にも同じように向けていかないと、簡単にしぼんでしまう可能性もある。今回の帝王賞は、その視線を国内から目を逸らさないための一里塚。それはともすれば、来年以降の新ダート競馬体系の盛り上がりにも影響するかもしれない。
大井競馬11レース「第46回 帝王賞」(古馬・JpnⅠ・2000m)
ドバイワールドカップ(以降、ドバイ)に遠征した馬が、帰国初戦として選択する機会が多かったのが、近年の帝王賞の特徴だった。今年はそこに日本調教馬が大挙参戦したこともあり、帰国初戦の馬が3頭参戦。海外遠征組と国内残留組の対抗戦という趣のある、今年の帝王賞になった。
<全頭解説>
(1)番 テーオーケインズ(中央)
ドバイはハイペースを追いかける位置から直線、ウシュバテソーロと併せ馬で伸びてきたように、国内統一GⅠ3勝の底力を発揮。最後置かれたのは前で戦っていた分で、4着でも内容としては互角に近かった。国内では昨年の帝王賞のように、負けるときはアッサリ負ける傾向もあるが、無様な姿を見せてはいけない1戦だ。
(2)番 クラウンプライド(中央)
ドバイは昨年UAEダービーを制したこともあって活躍が期待されたが、展開利を突いて5着まで。ここまで古馬相手では健闘しているものの勝利がなく、勝ち切る力がないことが現状の課題。それを初めてコンビを組む川田将雅騎手が引き出せるかは、レース全体のカギを握るとともに、この馬の将来をも左右するだろう。
(3)番 ランリョウオー(浦和)
大井記念を制してこの舞台での活躍も期待された昨年は、一瞥すらせず。その後に崩れたことは、その選択が正しくなかったことを示すに十分だろう。前々走でブリリアントCを制して衰えがないことは示したが、厳しい言い方をすれば今更感が漂う参戦。正直なところ、期待感をもって見ることはできない。
(4)番 メイショウハリオ(中央)
昨年の帝王賞は気楽な立場と状態の良さを活かして競り合いを制すると、前走かしわ記念は自慢の末脚を信じる競馬で混戦を制し、2度目の統一GⅠ制覇を果たした。周囲を意識して勝ちに動くと良くないが、自分の競馬に徹すれば混戦を抜け出す勝負強さを秘める。過去に連覇した馬がいないという、帝王賞のジンクスを破る可能性は十分ある。
(5)番 ノットゥルノ(中央)
飛躍が期待された今年は、川崎記念8着に平安S9着。振り返れば大井以外で行われた統一グレードはひと息で、大敗の理由はそこにあるか。昨年の東京大賞典でウシュバテソーロの2着があるだけに、大井に戻る今回は侮れないところ。しかしここで結果を残せないと、今後が厳しくなるのも確かだ。
(6)番 オーヴェルニュ(浦和)
統一グレードで馬券圏内に入ったのは中京コースのみで、過去2年参戦したこの舞台でも結果を残していない。今春に浦和へ移籍した後も物足りない競馬が続いており、今後に向けたきっかけが欲しいのが現状。それが得られそうな舞台ではない気がするが。
前走大井記念は追い込んで届かず4着だったが、地元の一線級相手に戦える手応えは掴めた気がする。昨年の羽田盃で4角最後方からの追い込みを決めたように、末脚の破壊力はここでも魅力十分。統一グレードでペースが上ることも悪くなく、力試しにはもってこいの舞台だ。
(8)番 プロミストウォリア(中央)
現在5連勝中。特に今年に入り東海SとアンタレスSをともに逃げ切り、勢いだけなら文句なく1番だ。今回は一気に相手が強くなるが、改めて単騎逃げが望めそうな組み合わせ。大井の馬場も速い時計が出ている現状を踏まえれば、対応できる可能性は十分あり、一気に頂点へ駆け上がっても驚けない。
(9)番 ライトウォーリア(川崎)
前走大井記念はスタート直後に行き場を失う不利があり、3着に終わったのもそれが原因だろう。昨年の東京大賞典と今年の川崎記念でともに5着と、統一GⅠでも戦えているが、その上となればスムーズな競馬をさせたいところ。初コンビとなる吉原寛人騎手が、どうやってその形に持ち込むだろうか。
(10)番 ジュンライトボルト(中央)
昨年チャンピオンズCを勝ったところまでは良かったが、その勢いで飛び出した海外で2戦がともに大敗。現地の馬場が合わなかったという話もあるが、速い時計が出やすい中央の馬場向きという評価が適当かも。それを考えれば、今の大井が速い時計が出るといっても対応できるか微妙で、早くも正念場を迎えた1戦と感じる。
(11)番 ドスハーツ(大井)
昨年の東京大賞典に敢然と出走したが、終始後方のまま11着。今年に入ってからは条件戦を含めても見せ場を作れていないことから、激走するシーンを想像するのは困難だ。ここは1頭でも多く負かすことが目標になる。
(12)番 ハギノアレグリアス(中央)
昨秋から統一グレード戦線に参入すると、4戦続けて連対中。名古屋大賞典では統一グレード2勝のケイアイパープルに競り勝って初タイトル獲得と、こちらも充実ぶりが目立つ。東海Sではプロミストウォリアに完敗だったが、長く良い脚を使える点は大井の馬場でこそ活きる印象も。昨年のメイショウハリオに近い立場にいるのがこの馬だ。
(詳細な出走表は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)
1着 (4)番 メイショウハリオ(2番人気)
2着 (2)番 クラウンプライド(4番人気)
3着 (1)番 テーオーケインズ(1番人気)
メイショウハリオ・・・前が止まらないこの日の馬場を考えれば、追い込み馬であるこの馬にとって戦いにくかったはず。それでも直線大外から伸びてきた姿には、自慢の末脚を信じ抜いた濱中俊騎手の自信がみなぎっていた。東京大賞典で負けた際はゴーサインを出して前を追いかけていたが、今回は行き脚がついても追い出しを待っていた。その分だけ最後まで末脚が衰えず、先に抜け出していたクラウンプライドをハナ差捉える要因になった。これで統一GⅠ3勝目。ダート界で一時代を築いた名馬たちに肩を並べたのではないか。なお勝ちタイムの2分1秒9は、この開催の時計の出方を考えれば、特別速くはない。
テーオーケインズ・・・課題のスタートで出遅れたことよりも、直線で前が開いていながら、そこを抜け出すのに時間がかかった事こそ最大の敗因。508キロというデビュー以来最高の馬体重が、末脚を鈍らせていたのは明らか。逆にいえば力負けではなく、馬体さえ絞れればアッサリ巻き返せるように思える。
プロミストウォリア(5着)・・・2角付近で口を割るシーンもあったように、前半1000m60.4秒の逃げは、この日の馬場を考えれば遅い。結果後続のプレッシャーを受け、息が入らずに最後失速。ハイペースの単騎逃げだったら、果たしてどうだったか。
ライトウォーリア(6着)・・・逃げたプロミストウォリアに乗って2番手追走。力を出し切った競馬で中央勢2頭に先着したものの、それで勝ち馬との1.2秒差は、力の差と受け止めるべきかもしれない。
