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ショートコラム “土古”の名を残すのはいいけれど

名古屋競馬場が土古<どんこ>から弥富に移転してはや1年。移転の前提にあったとされる、愛知県で開催される2026年アジア競技大会の選手村を跡地に建設する予定が、白紙撤回されたというニュースが伝わった。急変した社会情勢なども関係しているとはいえ、やりきれない気持ちになった競馬関係者は少なくないはず。その後に予定されている再開発についても、順調に進まなければ、何のために移転したのかという想いはさらに募るはずだ。

そんな旧名古屋競馬場の歴史を後世に伝えようと、明日30日に新名古屋競馬場で行われる若草賞に、今年から“土古記念”の名が加わることになった。かつてあった競馬場の名を競走名に残すことは、間違いなく必要。だがこの競走の歴史的背景を紐解けば、なぜこの競走なのかと首をかしげたくなるのも確かだ。

その複雑な歴史を紹介すると、JRAGⅠ優駿牝馬の地区代表選定競走として、2003年に笠松で創設された競走だった。その後サラブレッドを導入した福山競馬が“福山でもJRAGIの地区選定競走を”という声があがったことから、2009年から福山に移設。その後2013年をもって福山競馬が廃止されたのを機に、翌2014年から名古屋に引き継がれたというものである。

つまり若草賞という競走名には、福山で競馬が行われていた歴史を残す意味が含まれているのだ。特に同じく福山に移設された時期があったマイル争覇が、新競馬場移転に伴い競走名が変更(新競馬場にマイル戦がないため、トリトン争覇に変更)されただけに、その意味は更に強くなっている。そこに土古の名を付与したことは、ともすれば福山で競馬があった歴史を否定しようとしていると感じるのは私だけだろうか。

既存の重賞に付与するのであれば、創設時から旧名古屋競馬場で行われ続けてきた競走をいくらでも選択できたし、単に新設重賞として行っても良かったはず。競走名、とりわけ重賞競走の名称は、その記録が後世に長く残るだけに、深い意味と意図が求められる。それが競馬の歴史にも深く関わる名称なら、なおさら慎重さが要求されるはず。こういう愚策は他の主催者でも見られるだけに、改めて指摘しておきたい。

おことわり・若草賞の見どころは、本日中にツイッターで簡単に紹介いたします。


by hirota-nobuki | 2023-03-29 21:30 | コラム | Comments(0)

地方競馬・ダート競馬の発展を願ってやまない博田伸樹(ヒロタ・ノブキ)です。この場を通じて地方競馬・ダート競馬により興味を持つ人が1人でも増えてほしいと願っています。 twitter:@HirotaNobuki


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