コラム 今更ながら考えてみたい、盛岡芝コースの活かし方
2022年 12月 25日
JBC2022を振り返る際にも紹介したように、盛岡でJBCが開催されたのは8年ぶり3回目。その3回に共通しているのが、JBC当日に芝の重賞をアンダーカードとして行っていることだ。特に今年は2歳馬のジュニアグランプリと古馬のOROカップという、2つの地方全国交流を実施。しかもOROカップは当日中継したBSフジでも生放送し、盛岡オーロパークの魅力を伝える機会になったと思う。
ただかねてから感じていたのは、芝コースの活かし方は現状で十分なのか。そこで今回はJBCともダート競馬とも視点が離れるが、盛岡オーロパークの芝コース(以下、盛岡芝)の活かし方を考えることにした。
なお当初予定していたJBC2歳優駿の振り返りは、後日掲載する2歳路線全体を振り返るコラムの中で取り上げます。
・見た目の売上だけなら合格点だが
レースの内容については両レースの見どころについて紹介した記事のコメント欄を参照していただくとして、ここでは売上に注目して考えたい。両レースとも通常はそれぞれ9月に実施されていて、ジュニアGPは昨年1億円強で、OROカップは同1億2千万円余。JBCのアンダーカードとして行われた今年は、ジュニアGPが2億円弱で、OROカップも約2億9千万円と、2レース合計で昨年のほぼ2倍。見た目の売上で評価するなら、移設した効果はあったといえるだろう。
ただし1着賞金がジュニアGPは昨年比5倍、OROカップは同3倍(一昨年比では6倍)と聞けばどうだろうか。JBC全体を盛り上げるために、盛岡芝をアピールしようとした気持ちはわかるが、結果的に賞金増に見合った売上は得られなかった。確かに2レースだけ切り取るのは適切ではないけれど、もしかして主催者はアンダーカード2戦で10億円程度売れると、ソロバンを弾いていたのかと勘ぐってしまう。
また地方競馬における唯一無二の存在であるが故に、盛岡芝で行われる地方全国交流重賞は、賞金額がメンバーの質に影響する幅は小さく映る。その考えに立てば賞金を引き上げたことは、主催者の思惑を別にすればステイタス向上の意味合いが強い。それなら来年以降も同等の賞金水準を維持する必要があり、もし来年賞金額を戻すようなことをすれば、芝に対するステイタスを著しく毀損することになってしまうのだ。
確かに賞金は高ければ高いほどいいのは当然だが、それ故に賞金には様々なメッセージが込められやすい。だから私には今回、主催者が目先の盛り上がりだけを考えて、安易に賞金を引き上げたように映った。もっともこの感想が間違っていることを、新年度の番組が明らかになった時に証明してほしいとも思っているのだが。
・芝のJRAGⅠに直結する道はできないのか
ここでは盛岡芝の活かし方を考えていきたいが、やはり芝コースに対する適正を岩手(地方)所属のままで確認できることは大きい。その上で期待されるのが、当然ながら中央の芝で戦える馬を輩出することにある。そして実際、芝の地方全国交流競走は、その多くがJRAGⅠのステップ競走へ出走できる権利が与えられてきた。ただ近年はこの舞台で権利をとっても、それを行使しないケースが大半で、地方所属馬の中での頂点を争う状況に陥っている。
その理由を考えると、古馬は元中央馬が大半であるため、遠征しても力関係がわかっている状況がある。また若い世代はそもそも中央遠征のハードルが低いため、芝を求めるだけなら盛岡にこだわる必要がない。そのためJRAGⅠのステップ競走へ出走できる権利に、魅力を感じなくなっている気がする。
だとすれば、盛岡芝で行われる地方全国交流競走の結果で、JRAGⅠの優先出走権を直接与えることはできないのか。これなら地方所属馬に大きな魅力を与えるだろうし、盛岡芝のステイタスも上げることが出来る。それが巡り巡って、芝路線全体を活性化させる効果も期待できると考えている。
ただしそれを行うとしても、ローテーション的に直結する日程でできなければ意味がない。そうなれば秋に行われるJRAGⅠに限られてしまうが、現実的にJRAGⅠの番組を盛り上げる力になりうる競走となれば、2歳戦になるだろう。そこで2歳JRAGⅠへの優先出走権を与える番組作りを、この後考えてみる。
・ジュニアGPの先に、優先出走権を与える新設競走を
まず開催時期になるが、これは10月下旬を基本としたい。今年のJBC開催に際し馬場が持つか不安視する声はあったが、少なくとも10月に降雪による影響を受けた記憶はない。またこの時期ならデビューが遅かった馬も掬い上げられる上、JRAGⅠまで1~2ヶ月。様々な環境を踏まえれば、他の時期は考えにくいとまでいえる。
だがそのレースについて、現在盛岡芝で行われているジュニアGPを充てるのは違うと思う。それではその舞台の前に、他地区所属馬が盛岡芝を経験する機会がないためだ。そのため通常9月中旬に行われているジュニアGPの日程は動かさず、JRAGⅠの優先出走権を与える競走を新設。併せてジュニアGPは、上位馬にその新設競走の優先出走権を与える競走としたい。
その上で、できれば新設競走は同じ日または週に2レース組みたい。その2レースとは、阪神ジュベナイルフィリーズまたはホープフルSのいずれかに出走権が与えられる牝馬限定戦と、朝日杯フューチュリティSまたはホープフルSのいずれかに出走権が与えられる牡馬も出走できる競走。またこうすることで、2歳JRAGⅠに出走できない騙馬を新設競走に出られなくする一方、ジュニアGPを受け皿にできるメリットもあるのだ。
そして出走権を得られるのは、それぞれの優勝馬だけでも十分だ。ただこれを設けた場合でも、既存のJRAGⅠに向けた枠組みを失くす必要はない。頂点に向けた路線が多様であればあるほど、頂点のステイタスは上がっていくのだから。
余談だが、今年のようにJBCが盛岡で行われる場合でも、この新設競走はJBC当日のアンダーカードにすべきではない。それはJBC2歳優駿の注目度を下げる可能性もあるし、ホッカイドウ競馬所属騎手にJBC2歳優駿か新設競走かを選択させずに済む環境を与えることになるからだ。
・盛岡芝にも中央芝重賞並みのステイタスを
ところで2023年から、JRAGⅠのステップ競走に出走できるシステムが大きく変わることをご存知だろうか。これまで地区別の選定が優先され、それに向けた選定競走も各地で行われていたが、それが撤廃。地方所属として中央の芝競走に遠征し、一定の結果を残した馬が優先的に選定される形になったのだ(参考)。
過去にも中央の芝で実績がありながら、選定競走に出なかったり負けたりしたことで道を閉ざされた馬がいること。また大半の選定競走はダートで行われるため、その実績を持ち込むことの是非を考えれば、この変更は理にかなっている。だがこれによって、中央の芝に直結しなくなった盛岡芝の価値が下がったのも確か。その価値を保とうとして、今年のJBCで芝のアンダーカードの賞金を増やしたなら違う気がするし、そういう方向に向かわせたJRAの意識も間違っているだろう。
そこで盛岡芝で行われる地方全国交流重賞に関しては、中央芝重賞に匹敵する価値を与えてほしい。そうすることで特に春季のJRAGⅠに向けても盛岡芝が価値を持つようになり、それに向けた番組整備ができた時の岩手競馬も、存在価値を高めることにつながると考えている。
ご存知のように、2023年から全主催者を巻き込んだダート競馬の大変革がはじまる。だが芝競馬は1995年の“交流元年”以降、JRAという一主催者の改善に終始し“日本競馬”という視点における大改革は進んでいない。なぜなら何度も私がこのブログのコラムで指摘している“所属という既得権”がない環境を目指す姿が欠けているから。ここで提案したプランは、その理想に向けた次なる一歩になると私は信じている。
(参考)2023年度からのJRAGⅠステップ競走に申し込める地方所属馬(要約)
出走申込締切日における収得賞金が、2歳限定戦150万円超、3歳限定戦500万円超、古馬戦1600万超の馬。ただし元中央所属馬は、直近の中央抹消後に収得賞金を加算しなければならない(中央所属馬を含む出走馬選定順位で優位な場合のみ出走可)
なおステップ競走に出走できるのは、これまで通りJRAGⅠ1レースに対し1レースのみ。また2022年まで1つのJRAGⅠに対し、ステップ競走に出走できる地方所属馬は最大6頭という規定は、2023年度より撤廃される。
