コラム 間もなくダービーシリーズ2022-各地の3歳路線の現状を探るPART1(佐賀・名古屋・大井・園田編)
2022年 05月 25日
全国各地でダービー馬が決まる“ダービーシリーズ”が、今年は5月29日の九州ダービー栄城賞よりスタートします。近年は日程がばらけるようになり、シリーズとしての話題性が下がって来た印象もありますが、今年は8競走中6競走が6月7日から16日に集中。特に7日の東海ダービーから12日の高知優駿までの期間は、地方競馬全体でもダービーシリーズ以外の重賞がなく、かつての盛り上がりが戻ってくることが期待されます。
このブログでは毎年、ダービーに向けた各地の3歳路線の情勢を紹介しておりますが、今年も前哨戦の結果を交えながら開催順に紹介していきます。このPART1では、6月9日までの前半戦4競走についてご紹介し、6月12日以降の後半戦4競走は後日掲載します。
おことわり・本コラムは、5月25日12時までに得た情報を基にしています。また現在は予想に関する活動を行っていないため、開催時に予想記事は掲載いたしません。ご了承ください。
・九州ダービー栄城賞(5月29日・佐賀2000m)
中心的な役割を担っていたのは、佐賀では無敗の九州産馬タケノサイコウである。中央未勝利で転入後、連勝街道を歩むと、九州産交流のひまわり賞で中央勢も撃破。このまま3歳3冠路線も駆け抜けると思われたが、この直後に剥離骨折が判明して戦線を離脱してしまった。ただ故障は軽微で、競馬場に戻って調教も積まれており、この舞台に間に合った模様。状態面はともかくとして、この馬を巡って争われる1戦となりそうだ。
そのタケノサイコウ不在で5月8日に行われた1冠目の佐賀皐月賞は、2番手で進めた生え抜きのザビッグレディーが最後抜け出し、1冠目を手にした。2歳時はほとんど目立たなかったが、今年に入って6戦全て3着以内で、1750m以上に限れば地元馬に先着を許していない。佐賀皐月賞自体、先行馬に楽な展開ではなかった上、逃げて3着に残ったブルーデイジーが登録しなかったことも追い風になりそう。2歳時に歯が立たなかったタケノサイコウ相手に、雪辱を期す舞台でもある。
その佐賀皐月賞で2着だったシウラグランデは、中央未勝利から転入後3連勝していた馬。転入後連対を外しておらず、混戦を捌いてきた息の長い末脚は、距離が延びる本番でも注目したいところ。また同5着のオリベは、5月15日に行われたトライアルを勝利。佐賀皐月賞前にはシウラグランデの連勝を止めた1戦もあり、力は互角だろう。
またトライアルは5月14日にも行われていたが、そこを制したのはラスクミソ。デビューが今年4月までずれ込み、これが初勝利とギリギリ間に合った感はあるが、逆にいえば未知の魅力では1番。勢力図を一変させる走りが見られるかもしれない。
東海ダービー(6月7日・名古屋2000m)
名古屋競馬場が4月に弥富へ移転したことに伴い、今年から2000mで行われる。移転後は日によって馬場傾向が大きく振れていることに加え、3歳戦線は旧名古屋時代の勢力図が崩れた印象もある。難解な中で本番を迎えることは間違いないだろう。
5月4日に行われた1冠目の駿蹄賞は本番と同じ距離で行われたが、序盤後方にいたタニノタビトが、2周目の向正面でガラ空きの内側を上昇して3角先頭。その勢いは最後まで衰えず、最後は後続を大差に千切ってしまった。先行勢が早々に息切れした展開に加え、手綱を取った岡部誠騎手の好判断が光り、この着差を力の差と受け取るのは危険だろう。しかし連勝中と軌道に乗っていたことは確かで、これだけの勝ちっぷりを見せられると、本番でも注目しなければいけない存在である。
その駿蹄賞で2着だったイイネイイネイイネは、これでスプリングC、新緑賞に続く3戦連続の重賞2着。重賞タイトルにあと一歩届いていないが、末一手でありながら安定した走りを続けている。同3着のドミニクはそれ以上に追い込みに徹している近況だが、こちらは2歳時にゴールドウィング賞を制した1戦がある。駿蹄賞でつけられた着差が嵌ったものであるならば、その逆の結果を本番で出す可能性は、どちらにもあるはずだ。
一方、旧名古屋で今年梅桜賞とスプリングカップを制したアップテンペストは、駿蹄賞でシンガリ負け。新春ペガサスカップを勝ったレイジーウォリアーは駿蹄賞5着も、旧名古屋ほどの走りが見られない。ただどちらも逃げ馬で、激しい先行争いに巻き込まれたという側面もある。同型馬の組み合わせ如何では、本番での巻き返しは残されているかもしれない。
また4月7日に笠松で行われた新緑賞を制したリンクスターツは、駿蹄賞ではなく、同日の裏番組に出走。確勝を期したはずの1戦で3着に敗れ、評価を落としたか。逆にこの時勝ったコンビーノは、新名古屋で4戦3勝と結果を残しているだけに、本番で名前があれば注目されるはず。そしてデビュー戦でレコード勝ちし、笠松期待の星といわれたシルバが5月10日の笠松で復帰。古馬相手に2着となり、デビュー以来の連勝は3で止まったが、出てくれば侮れない存在になると思う。
東京ダービー(6月8日・大井2000m)
ホッカイドウ競馬デビュー組が主力を形成してきた南関東3歳戦線。中でも雲取賞と京浜盃を逃げ切ったシャルフジンが一歩リードした格好で、5月12日に行われた1冠目の羽田盃を迎えたが、最後の直線で差し馬の餌食になって3着に終わった。マイペースで逃げられた過去2走に対し、クライオジェニック(15着)に絡まれた今回は前半1000m59.5秒という超ハイペース。それが直接の敗因であり、敗れてなお強しの印象もあったが、今年は例年以上に逃げ馬が多い。それら相手にどう戦うかという課題もみえた1戦だった。
その羽田盃を制したのは大井生え抜きのミヤギザオウだった。最後の直線でガラ空きになった内ラチ沿いを後方から追い込み、一気に抜き去った末脚は破壊力満点だった。展開とコース取りが嵌ったのは確かだが、デビュー当初から発揮していた鋭い末脚が、トップクラス相手でも通用したことは証明。前走がデビュー6戦目と数を使われていないため、更なる成長も期待でき、2冠達成が可能な力は秘めていると思う。
その羽田盃組に匹敵する注目を集めているのが、船橋生え抜きのロマンスグレーである。2月に初勝利を挙げるまで5戦かかったが、その後2連勝が2番手で追いかけた素質馬を潰すという強い内容での逃げ切り勝ち。5月4日に行われた東京湾カップこそ2着に終わったが、連勝の反動があったという話。立て直せれば追いかけた方が厳しくなる逃げを打てるだけに、間違いなくレースのカギを握る存在になるはずだ。
その東京湾カップを勝ったタツノエクスプレスは、3番手から自分で動いて差し切った内容は高い評価が必要。それまで目立った実績はなかったが、距離が延びて良さが出てきたとなれば侮れない。また5月13日に行われたトライアルを制したトーセンエルドラドは、これで中央500万下から転入後2戦2勝。本番と同じ舞台を経験した強みを活かせば、大勢逆転の可能性は秘めていると思う。
羽田盃出走組に戻れば、2着に追い込んだライアンは、乱戦になると台頭する気分屋。同じような展開になれば、やはり乱戦だった平和賞を勝った勝負強さが活きるかも。JBC2歳優駿でシャルフジンに先着していたナッジ(羽田盃7着)とリコーヴィクター(同5着)は、南関東移籍後勝利がないが、逆転に向けた策はあるはず。ここで取り上げられなかった馬も含め、ゲートに入る全ての馬にチャンスがある、歴史的大混戦でレースの幕は開くことになる。
兵庫ダービー(6月9日・園田1870m)
4月7日に行われた1冠目の菊水賞を制したのは、後方からのロングスパートで差し切ったベルレフォーンだった。デビュー3戦目で園田ジュニアC3着に入るなど素質の片鱗を見せていたが、旧名古屋でのスプリングCで4着に敗れ、株を下げていた節もあった。ただこの1戦で素質開花となれば、本番でも堂々の主役候補。5月4日に行われた前走兵庫チャンピオンシップは地方最先着を逃す6着だったが、中央勢に揉まれた経験も本番で活きると思う。
その菊水賞で1番人気だったのは、笠松のゴールドジュニアと兵庫ユースカップと重賞連勝中だったバウチェイサー。ただ初めての1700mを意識したか、控える競馬をさせたところ、直線で伸びず3着に敗れた。逃げれば兵庫ジュニアGPで4着になるなど、強い相手にも通用していたが、控えて良さが出る馬ではなかったという結果。兵庫チャンピオンシップでは、早々に一杯になったものの、中央勢相手に逃げる競馬はできている。逃げにこだわれば、巻き返す可能性は十分あるだろう。
菊水賞で2着だったエイシンクエーサーは、兵庫ユースCではバウチェイサーを意識しすぎて5着に終わったが、自分の競馬に徹して結果を出した。兵庫チャンピオンシップを回避したローテーションは微妙も、まだ底を見せていない魅力はある。また6着だったニネンビーグミは、5月12日に行われた牝馬限定ののじぎく賞を制覇。菊水賞は逃げて潰されたが、2番手からの競馬で勝てたのは大きな収穫。2歳時にベルレフォーンを破ったこともあり、力は互角の存在だ。
上位陣は実力拮抗の印象で本番を迎えることになったが、そうなった最大の理由は、2歳時に園田ジュニアCまで無傷の5連勝で駆け抜けたガリバーストームが戦線離脱したためだ。昨年も2歳王者ツムタイザンが故障でダービー路線に乗れなかったが、それでなくとも近年は2歳時の主力が3歳になって消えているケースが多い。それだけにこの馬が出ていたら・・・という話が出てこないような、質の高い戦いを期待したいと思う。
