コラム 「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」2021発表-PART1 トップランカー編
2022年 02月 19日
先日「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」の2021年版が発表された。日本調教馬が海外で活躍する姿が日常化していたものの、主に結果を出していたのは芝部門。しかし2021年はマルシュロレーヌの米ブリーダーズカップディスタス制覇をはじめ、ダート部門でも結果を出したのが象徴的だった。それ故に日本国内のダート競馬が、どこまで世界で評価されているかは、今まで以上に注視する必要があるだろう。それはともすれば、日本国内の競馬関係者に対し、意識変革をもたらすものにしなければいけないのかもしれない。
毎年このブロマガでは、国内向けに発表される「JPNサラブレッドランキング」のダート部門について個人的な考察を加えながらコラムをまとめているが、今年は統一GⅠ優勝馬を中心とした“トップランカー編”と、それ以外の地方所属馬にスポットを当てた“地方所属馬編”に分けて紹介することにした。
おことわり・本文中の“今年”は2021年を、“昨年”は2020年を示します。
・歴史的偉業のマルシュロレーヌは牝馬史上最高の116。ドバイワールドC2着のチュウワウィザードも116評価
今年は冒頭で、海外のダート競馬で結果を残した馬をまとめて紹介する。まずは米ブリーダーズCディスタフを制するという歴史的偉業を成し遂げたマルシュロレーヌだが、このレースで116の評価を獲得した。これは2015年にチャンピオンズCを制したサンビスタの113(注)を上回る、国内牝馬史上最高の評価。過去の同レース優勝馬がどういった評価を得ていたのか把握していないので、その比較はできないが、歴史的偉業にふさわしい評価といえるだろう。
またドバイワールドCで2着に入ったチュウワウィザードも、116の評価を獲得。同馬は昨年国内で117の評価を得ていたので、そこから評価は下がった格好だが、それに匹敵するパフォーマンスと海外から認められた。これはある意味、国内のダート競馬が海外から一定の評価をされていることの証明かもしれない。
スプリントカテゴリでは、サウジアラビアで行われたリヤドダートスプリントを制したコパノキッキングが112の評価を獲得。今年はJBCスプリントがマイルカテゴリになる1400mで行われた影響もあって、これが日本調教馬のスプリントカテゴリにおける最高評価になった。さらに同競走2着のマテラスカイも111の評価を得たが、2頭ともこれは2019年に得た評価に並ぶ、自己ベストである。
あと3歳馬では、サウジダービーを制したピンクカメハメハに107、UAEダービー4着のタケルペガサスは104の評価を受けた。ここまで紹介した6頭が、海外のダート競走がベストパフォーマンスと評価された国内調教馬である。
(注)オールウェザーでは、2010年にレッドディザイアが115(ドバイワールドCの国内前哨戦)の評価を得ており、これを過去最高とする話もある。
・チャンピオンズC圧勝のテーオーケインズに、国内ダート競馬史上2頭目の120到達
ここからは国内のダート競馬の評価に移るが、今年最高評価を得たのは帝王賞とチャンピオンズCを制したテーオーケインズだった。同馬は統一グレード初出走となった昨年の東京大賞典で可能性あふれるレースを披露し、今年の飛躍を期待された1頭だった。その期待に応えるようにアンタレスSで統一グレード初制覇を果たすと、その勢いで帝王賞を制覇。チャンピオンズCでは連覇を目指したチュウワウィザードを6馬身千切る圧勝劇を披露し、一気に国内ダート界の頂点に上り詰めたのである。
そしてその評価は、帝王賞でもインターミディエイトカテゴリでは最高となる116の評価を得たが、チャンピオンズC(マイルカテゴリ)で何と120の評価を得た。これはランキングが現行の制度に移行した2001年以降、その初年度にクロフネがジャパンCダートで125の評価を獲得して以来、史上2頭目の120到達。このコラムでは118を歴史的名馬クラスと評する基準のような位置づけをしていたが、一気にそれらを飛び越えた格好になった。
その背景には、やはりマルシュロレーヌの存在があったと思う。というのも、もし119だったとすれば、牝馬に対するアローワンスの関係でマルシュロレーヌの評価が上になる。しかもテーオーケインズが制した帝王賞にはマルシュロレーヌも出走していて、そこで8着に敗れていた。この直接対決があったことと、マルシュロレーヌの偉業。その上でチャンピオンズCの圧倒的なパフォーマンスがあったことで、この評価につながったと考えている。
ただ私が評価する立場だったとしたら、120はつけていなかっただろう。近年118~119をつけた歴史的名馬クラスと比べ、まだその域に達していないと感じているからだ。2022年は海外で戦う機会が多くなるだろうが、そこでこの数字にふさわしいパフォーマンスを披露することが、課された命題かもしれない。
・115以上は地方馬2頭を含む、歴代最高の8頭。3歳時から4年連続のオメガパフュームは、史上初の評価
今年はテーオーケインズ以外にも高い評価を得た馬が数多く、115以上の評価を得た馬が8頭(海外で評価されたマルシュロレーヌとチュウワウィザードを含む)に及ぶ。これは2012・17・18年の7頭(注)を上回る歴代最高。110以上も昨年から4頭増の25頭となったことと併せ、継続して質の高いレースが繰り広げられたことを意味している。そしてこの中には、テーオーケインズとともに統一GⅠ2勝を挙げたカジノフォンテンと、JBCクラシックを制したミューチャリーも名を連ねた。
カジノフォンテンは川崎記念で昨年の東京大賞典で得た110を上回る113を獲得すると、かしわ記念で115まで評価を上げた。1戦1戦評価を高めたことが窺える、一連の活躍だった。そしてミューチャリーは、JBCクラシックで115の評価。統一GⅠで善戦続きだった頃は108までだったので、一気に評価が上がった印象はあるが、破ったメンバーを考えれば納得できる数字でもある。なお地方所属馬で115以上の評価を得たのは、2011年に115を得たフリオーソ以来10年ぶりである。
また東京大賞典4連覇の偉業を成し遂げたオメガパフュームも、同レースで115を獲得した。これで3歳時から4年連続となる115となったが、3歳時からの連続115以上は、アドマイヤドンの3年連続を上回る史上初。それ以上の評価をなかなか得られないのがもどかしいが、現役続行を決めたことで、エスポワールシチーとワンダーアキュートが持つ5年連続115以上という記録を2022年に目指せることになる。
115は他に、フェブラリーSを制したカフェファラオと、マイルチャンピオンシップ南部杯連覇を果たしたアルクトスも名を連ねた。アルクトスは昨年同競走を勝った直後に115の暫定値をもらっていたため、1年越しの評価といえる。またカフェファラオは3歳時の昨年に112の評価を得ていたことが背景にあるが、レースの質に対して基本的に上振れするレース。評価されすぎという印象がある。
(注)オールウェザーを含む場合、2010・11年も115以上が7頭いた。
・レッドルゼルはJBCスプリント覇者として5年ぶりの高評価。牝馬部門は全体的な評価の底上げ必要
短距離路線では、今年は1400mで行われたJBCスプリント(マイルカテゴリ)を制したレッドルゼルは113の評価となった。これまでの勝ち馬の目安は112で、それ以上の評価を得たのは2016年に114を得たダノンレジェンド以来。ドバイゴールデンシャヒーン2着など、年間を通じて高いパフォーマンスを発揮していたので、それにふさわしい評価だと思う。
1400m戦にこだわれば、ハンデ戦の統一GⅢ2勝のラプタスが110、年間統一GⅢ3勝のテイエムサウスダンが109の評価を得た。これだけ高い評価を得た2頭がJBCスプリントに出られなかったという現実については、考えさせられるところはある。
一方で1300m以下が対象のスプリントカテゴリにおける国内の競走では、東京盃を制したサクセスエナジーと、東京スプリント2着のサブノジュニアの110が最高評価。サブノジュニアは今年未勝利に終わったが、レーティングの上では昨年JBCスプリントを制した際の111に近い評価を得た。
また牝馬路線は、JBCレディスクラシックを制したテオレーマの評価は107。同競走の優勝馬に対する評価は、4年連続で横ばいとなった。マルシュロレーヌ不在の組み合わせでは仕方ないと思われるかもしれないが、実はマルシュロレーヌ自身、国内戦における評価は106が最高(エンプレス杯・ブリーダーズゴールドC)。近年この部門について、層が厚くなりながら全体の評価は下がっていると指摘しているが、マルシュロレーヌの偉業によってそれが浮き彫りになった印象が否めない。
実は2013年のJBCレディスクラシックを制したメーデイア以降、牝馬限定戦で110以上を得た馬がいない。では牡馬相手に結果を出せばとなるが、今年牡馬相手に日本TV盃を制した際のサルサディオーネが105止まりでは、牝馬というだけで評価しないといっているに等しい。マルシュロレーヌの偉業に報いるためにも、牝馬路線全体の底上げが必要な気がする。
・2つの史上初が生まれた3歳部門の背景は。2歳トップのドライスタウトは歴代2位タイの高評価
ここから世代別の評価を紹介するが、歴代2位となる32頭が100以上の評価を受けた3歳部門は、ジャパンダートダービーを制したキャッスルトップが109でトップとなった。地方所属馬がこの部門で単独トップとなったのは2007年のフリオーソ以来。ただトップが110に届かなかったのは、現行制度になった2001年以降では初めてのことである。
その背景には地方所属馬が歴代最高となる11頭(過去最高は2001年の7頭)が100以上の評価を受けたことが関係していると考えている。ジャパンダートダービーを制したことも含め、それだけ地方所属馬のレベルが高かった訳だが、一方で地方馬同士の競走は実際のレベルよりレーティングが抑えられる傾向にあるためだ。その辺りは地方所属馬編で、改めて掘り下げることにしたい。
そして2歳部門は、デビューから無傷の3連勝で全日本2歳優駿を制したドライスタウトに110。これは昨年のアランバローズらに並ぶ歴代2位タイの評価で、豪華メンバーとなった全日本2歳優駿の快勝が高く評価された結果である。
なお100以上の評価を得た2歳馬は、昨年より1頭減の10頭も、3年連続で2桁に乗った。興味深いのは中央勢でランク入りした7頭が、全て104以上となったこと。トップランクに多くの馬がいる一方で、そこに迫る中間層が少ないランキングになった。
<博田伸樹による、統一GⅠレーティング>
今回ランキングに関する記事を2つに分けたのは、統一GⅠ各競走のレーティングを示すことにしたためである。これまで記事中でその評価に対する是非に触れる機会はあったが、それだけでは足りないと考えたため。これを通じて各競走を私自身がどう評価しているか、知っていただければと思っている。なお個人レーティングには上下の矢印をつけている場合があるが、それぞれ1ポイント上下させることも考えたことを意味している。
左から「競走名」(距離区分)優勝馬-公式レーティング<個人レーティング>
「川崎記念」(I)カジノフォンテン-113<113>
「フェブラリーステークス」(M)カフェファラオ-115<114>
「かしわ記念」(M)カジノフォンテン-115<115>
「帝王賞」(I)テーオーケインズ-116<116>
「ジャパンダートダービー」(3歳I)キャッスルトップ-109<109↓>
「マイルチャンピオンシップ南部杯」(M)アルクトス-115<115>
「JBCレディスクラシック」(M)テオレーマ-107<108↑>
「JBCスプリント」(M)レッドルゼル-113<113>
「JBCクラシック」(I)ミューチャリー-115<115>
「チャンピオンズカップ」(M)テーオーケインズ-120<119>
「全日本2歳優駿」(2歳)ドライスタウト-110<109>
「東京大賞典」(I)オメガパフューム-115<115↑>
(注)距離区分の略号は、以下のとおりである
S-スプリント(1000~1300m)
M-マイル(1301~1899m)
I-インターミディエイト(1900~2100m)
