「マイルチャンピオンシップ南部杯」戦評−黄金世代もゴールドドリームも撃破! サンライズノヴァに統一GⅠ奪取をもたらした“ラストピース”
2019年 10月 16日
<勝利に導いた、吉原寛人騎手の“盛岡コースに対する経験値”>
レースは好スタートを切った外枠勢がそのまま先行し、ハナを奪ったのはロンドンタウン。これにノボバカラが絡んでいき、2頭で後続を引き離す形を作った。そしてこのペースが何と、前半1000m57.6秒。2010年以降しかデータはないが、前半57秒台は2015年に同57.9秒が記録されて以来2度目。比較的時計が出る馬場状態だったが、ペースを作った2頭には厳しかったはずである。
勝ったサンライズノヴァは元々スタートが良くない馬なので、1~2馬身程度の出遅れは許容範囲の部類。しかし普段はそのまま最後方付近で我慢する馬が、今日は力を使わずに中団まで追い上げた。いつもの南部杯なら追い込み馬の負けパターンになるが、今年は逃げ馬が後続を離した超ハイペースだったので、これで先頭との距離感は普段並み。位置取りとペースが上手くかみ合ったことは、勝利に近づく大きな要因だった。
そしてポイントになったのは、3コーナー過ぎからモジアナフレイバーを外へ張りながら追い上げたことだ。外が伸びる傾向にある馬場を利しながら、外に馬を置くことで遠心力に耐えられなくことも避けた、吉原寛人騎手のファインプレー。その勢いを保ったまま直線に向くと、坂下で早くも先頭。追い込み馬がこの段階でおつりを残して先頭に立たれては、もはや勝負あり。着差としては1馬身半だったが、完勝と評していいだろう。
これまでサンライズノヴァが統一GⅠで結果を残せなかったのは、追い込み馬故に必要以上に後方から競馬を進めたことが理由の1つ。その意味で先入観がなく、しかも盛岡コースの騎乗経験を豊富に持っていた吉原寛人騎手を鞍上に迎えたのは、正に勝つための“ラストピース”。このコンビなくして、今回の勝利はなかったと思っている。
だがこの1勝を機に、統一GⅠタイトルを積み重ねるかとなれば、それは難しい。そもそも東京専門といわれただけに、コース形態が似た盛岡コースが合っていたという要因があり、他の競馬場で同様に走れるかは疑問。また時計のかかる馬場も苦手で、歴代2位となる1分34秒2という高速決着になったことも有利に働いた。関係者は今後距離を伸ばすことも考えているようだが、それでは現状、武器となっている末脚の切れを失う可能性も。来年のこの舞台まで、我慢を強いられる可能性もありそうだ。
<アルクトスがイン勝負にいった理由と、やはり盛岡で勝てなかったゴールドドリーム>
2着となったアルクトスは、前を行く2頭を行かせて、3番手からの競馬。しかし3コーナーを過ぎて前との差が詰まると、2頭の内側に進路を取ったのがポイントになった。まだ後続が来ていない段階でこの選択をしたのは、ゴールドドリームを負かすための作戦だったと私は思っている。
結果的にゴールドドリームに先着できたので、そこだけ切り取れば成功だったかもしれない。しかし今回見せたサンライズノヴァの走りを、ゴールドドリームがやるイメージだったとすれば、果たしてどうだったのか。どちらにしても鞍上の田邊裕信騎手は、まだ正攻法で勝てる力はないと判断したことが、根本的な理由だと思っている。それでも今回、統一GⅠ級で通用することがわかったし、まだ完成品でないこともわかった。このレースはリベンジが困難と予想で指摘したが、この馬だったらそれを来年、叶えられるかもしれない。
そしてゴールドドリームは、3番手グループを見る位置で進めると、勝負所で動いたサンライズノヴァとモジアナフレイバーを追いかけるように上昇。しかし前を交わすような勢いに欠け、直線で中を割るように追い上げたものの、ゴール直前で3着に上がるのがやっとだった。2着を守れなかったのは、前走予定していた帝王賞を回避した影響があったかもしれないが、負けたのは1強ムードで戦い方を見失ったことに尽きるだろう。
この馬について再三、展開のアヤやライバルのミスをつけないと勝てないと語るのは、逆にいえば自身より強い馬を負かすための戦い方が得意ということ。ただでさえ底力勝負になるオーロパークで、そんな相手を見つけにくかった今回の組み合わせは、勝てる理由がどこにもなかったことの裏返し。過去にも1番人気では条件戦時代に1度しか勝っておらず、その点にも真の実力馬でないことは現れている。今回の敗戦は、それを改めて世に知らしめただけなのだ。
<初物尽くしで対応できたモジアナフレイバー。ロンドンタウンは状態の良さが仇になったか>
期待したモジアナフレイバーは、サンライズノヴァと相前後する位置で進め、勝負所で動いたのも一緒。しかし最後の直線での叩き合いで後れを取ってしまい、4着に終わった。上昇していく時にこちらの手綱が激しく動いていた一方で、サンライズノヴァはまだ余裕があった手応えの差に加え、終始外々を回らされた点も影響が。特に4コーナーでは外へ張られるような形になってしまったので、そこで勢いが削がれた点もあったかもしれない。
それでも初物尽くしで、しかも経験したことのない高速決着にいきなり対応できたことは、改めてポテンシャルの高さを証明した。今後も厳しい舞台でもまれた上で、帝王賞の際に指摘したラスト1ハロンでもうひと伸びする底力を身につければ、統一GⅠを勝てるはず。今の姿勢を失うことなく、臆せず戦い続けてほしいと願っている。
ハナを奪ったロンドンタウンは、4コーナーまで先頭を守ったが、最後は止まり5着。勝っていた頃の馬体重に今回絞れ、状態面はとにかく目立っていたが、それがオーバーペースにつながっていた可能性も。一方でこの舞台で高速戦を演出したスピードが、どこで活かせるかを考えてみたくなったのも確か。久しく使っていない短距離戦に矛先を向けても、面白いかもしれない。
6着のミツバと7着に終わったオールブラッシュは、ともに距離不足な上、高速ダートについていけずに終了。先々の戦いに向けたたたき台にはなったと思うが、オールブラッシュはレース後に船橋へ移籍すると発表。今後の動向に注視してほしい。2番手追走のノボバカラは、4角手前で一杯になり8着。マイペースで逃げられないと、現状では厳しいと感じた。
モジアナフレイバー以外の地方勢は、13着となったパンプキンズが、好スタートから2~30メートルだけ先頭を走ったのが唯一の存在感。今後短い距離を志向するとされる同馬が、統一GⅠ級のスピードを一瞬でも体感したことが、今後の糧になってほしいと思う。
(詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)
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このレースの結果を受けて掲載する予定でしたJBCクラシックの展望記事は、18日頃の掲載を予定しています。
