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「フェブラリーステークス」戦評−スローペースの一人旅で統一GⅠまで奪取したインティ。その背景にあるものは

フェブラリーステークスのレースの質をみる上で“60秒”というキーワードがある。それは最後方近辺からの直線一気もある差し馬有利のレースが、1000mの通過が60秒台になると、途端に逃げ馬や早目先頭で押し切ろうとする馬を捕まえられなくなるからだ。この日逃げたインティが刻んだペースは、1000m通過60.2秒。このペースで一人旅を演じられては、逃げ切り勝ちも当然と言わんばかりの結果だったが・・・。

<これしかない競馬で勝ったインティ。これしかできなくても可能性は十分だ>

戦前に逃げられる馬は沢山いるが、何が何でも逃げたい馬が見当たらないと評したように、スタートから押して先行しようとした馬はほとんどいなかった。ダートに入るタイミングではサンライズソアが先頭だったが、徐々に加速がついたインティがダートに入ってから前に出ると、それに抵抗せず。ここで前の序列が固まると、最後の直線に入るまで、ほぼそのままの体制で進むことになった。

勝ったインティは序盤にゆっくり入り、勝負所でピッチを上げるレースで連勝を続けてきた。しかし今まで1700~1800m戦を使って来たこの馬にとって、初のマイル戦でその形にするには、ハナを奪ってスローペースに落とすしかないと思っていた。それは前半のペースが速くなればなるほど、マイラー・スプリンターが台頭しやすいため。それらを封じるためにも、今までの形にこだわる必要があったのだ。

結果的にそれをアッサリ実現し、直線半ばでセイフティリードを築いた内容は、完勝といっていい。では今後を占う時に、今日のような競馬しかできないことが弱点になるかと聞かれれば、そうではないと考えている。それは勝因の1つでもある、現在のダート競馬界に絶対的なフロントランナーがいないこと。そして手綱を取るのが、かつてそんな存在だったコパノリッキーの手綱も取っていた武豊騎手であるからだ。

武豊騎手が乗る時のコパノリッキーは、駆け引きという名の心理戦で優位に立ち、マイペースに持ち込むことで勝利を掴んでいた。恐らくインティとのコンビでも、同じような心境で戦っていると推察する。それで条件が合わない舞台で結果を出したことで、今回より適性があるはずのチャンピオンディスタンスの統一GⅠでも、心理的に優位に立ちやすい。つまり7連勝で統一GⅠを制したという勢い以上に、環境面で活躍しやすい状況を作ったのが今回の勝利ではなかったか。もちろんそれは、ルヴァンスレーヴとの対決を早く見たいことの裏返しでもある。

<課題を克服できなかった敗者たち>

ここから負けた馬について振り返る。2年前に制したゴールドドリームは、中団から極限級の末脚で猛然と追い込んできたが、昨年と同じクビ差の2着に終わった。今年もスタートは良くなかったが、ペースが遅かったことと内枠を引いていたことで、不利なく流れには乗れた。また昨秋に見られた勝負所で反応が悪くなるシーンも今回はなく、最後の末脚を含め、力の衰えがないことがわかったのは前向きに捉えるべきだろう。
しかし勝つためにはインティが楽に逃げすぎた。これを不運といえば楽だけど、あれで交わせるなら、勝てなかった統一GⅠの多くを勝利に変えていたはず。そしてこれは、真っ向勝負で統一GⅠを勝った経験がないことにもつながっている。7戦連続統一GⅠ連対は凄い記録だが、今後もちょっとしたことで何かに負ける競馬を見続けるのだろうか。


3着のユラノトは、武蔵野Sや根岸Sと同様に、内々でロスなく立ち回って台頭した結果。ここまで相手が強くなっても上位に来たのは評価できるが、こう器用に立ち回れるなら、地方の小回りコースの方が統一グレードタイトルを手にするには近いかも。いずれにしても早い段階で勝てないようだと、善戦マンのままで終わってしまうだろう。

3年前の覇者であるモーニンは、当時を彷彿とさせる好位追走の競馬を見せたが、直線で伸びず4着。昨年から短距離の差し馬にモデルチェンジしているが、それ故に現状ではマイルでも長い印象が。この結果を受けてマイル戦への未練を断ち切れるかが、復活への鍵になりそうだ。

意外だったのは10着に終わったオメガパフューム。終始外々を回らされた上に、ここまでのスローペースでは、持ち味である息の長い末脚は活きない。元々条件が合わない印象はあったが、明け4歳馬にとって使わずに可能性を否定するのはふさわしくない。この敗戦が必要な通過点だったと考えられればいいのだが

連覇を狙ったノンコノユメはスタートで大きく出遅れ、その後無理に巻き返して末脚を失くし、結局13着。昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯でも大きく出遅れたが、こうスタートが不安定だと、今後も好走は厳しい。その改善が今からできるだろうか。

そして期待したサクセスエナジーにも触れると、前を見る3番手からの競馬は予想していた位置取り。しかし直線で伸びることはなく、最終的に8着となった。距離延長に活路があるとみてわずかな可能性に欠けたが、元々ここで逃げ切れるスピードはないし、さりとて切れ味勝負も分が悪い。今日の展開ではノーチャンスだった。

ところで何故チャンスが小さいと思える馬に本命を打ったかといえば、それは本命を打ちたい馬がいないメンバーだったから。この条件が合う馬は状態面や展開に不安があり、さりとて近況の良い馬は府中のマイル戦に対する適性に疑問符がついた。何らかを克服しないといけない馬ばかりが揃ったなら、人気にならなさそうな馬を狙いたかったのがその理由。そして結果的に不安が的中したり、課題を克服できなかったりで終わる中、1頭だけ課題を克服したのが勝ったインティだったということも理解してほしいと思う。

<“強い馬の背中を知らないと”というけれど>

最後に馬自身の評価以外も含め、コパノキッキングを取り上げたい。スタート直後から抑え込む形で最後方まで下げ、最後の直線で大外に。そこからいつもの末脚を発揮したが、5着が精一杯だった。一見すると前が止まる流れだったらと思うが、それでは距離不安が露呈していた可能性も。想像できる一番結果を出せる流れになって格好をつけたといえ、短距離の差し馬という評価は高められたと感じている。

ただ藤田菜七子騎手との初コンビについて、あの戦い方しかできない状況に追い込んだという意味で、話題性以外の良さを感じなかった。ちょうど同じ日、カーリングの日本選手権決勝が行われていたが、様々なシチュエーションや予期せぬ状況で瞬時に決断しないといけないスキップに求められるスキルは、競馬における騎手にも通ずる。そこに差があり、しかも馬(カーリングならチームメイト)を手の内に入れることなく戦ったのが今回とすれば、馬も騎手も不幸だったと思うのは私だけだろうか。

例えば武豊騎手のJRAGⅠ初騎乗も、東京優駿初騎乗も、自らの手綱で出走に導いた馬の手綱によるものだった。また2009年のJBCクラシックで女性騎手として初めて統一GⅠに騎乗した山本茜騎手も、直前の重賞で2着に導いたことで出走につながったものだ。そういったステップがなかった今回の騎乗に対し、とかく若手騎手の成長に必要とされる“強い馬の背中を知らないと”はなかった。杞憂であってほしいけれど、これが1人の若手騎手の成長を阻害しなければいいのだが。

(詳細なレース結果は日本中央競馬会のオフィシャルサイト等で確認してください)

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JRA主催のダート統一グレード競走は、今後も統一GⅠのみ戦評記事を掲載します。

by hirota-nobuki | 2019-02-19 19:00 | Comments(0)

地方競馬・ダート競馬の発展を願ってやまない博田伸樹(ヒロタ・ノブキ)です。この場を通じて地方競馬・ダート競馬により興味を持つ人が1人でも増えてほしいと願っています。 twitter:@HirotaNobuki


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