コラム 案じてしまう、JBCの行く末
2017年 12月 02日
大井競馬場で行われた2017年のJBCは、多くの感動を生み出して終了した。その流れを来年以降につなげていきたいところだが、ご存知のように来年のJBCは初めて、主催者がJRA(京都競馬場)となる。これがダート競馬の発展にとってどんな影響がもたらされるのか、歴史的背景を含めて考えていきたい。
・構想自体はJBCの方が先だった?
JBCがスタートしたのは2001年。その前年にはジャパンカップダート(現・チャンピオンズカップ。以降、JCダート)が創設され、ダート競馬に対する注目度が一気に高まった時期である。だがこれについて、早くから構想が練られていたのは、一見後発のように見えるJBCだといわれている。
そもそもアメリカにおけるブリーダーズカップの成功を受け、日本でも生産者(日本では生産牧場を生産者と称した時代が長かったため、ここでも生産者とする)が競馬に積極的に関わることを目的に「(一般)社団法人ジャパンブリーダーズカップ協会(以降、JBC協会)」を設立。ここが賞金を出資する形で1989年、ホッカイドウ競馬にブリーダーズゴールドカップ(以降、BGC)が創設されたのが第一歩だった。
そしてこのレースが発展するのと連動するように、ダート競馬の進展・拡大も進んだ。そこでダート競馬の頂点を争う競走を、生産者主導で新たに創設するという目的で現在のJBCにつながる構想が生まれた。1998年に発足した検討会で議論を重ねる中で、その第1回を2001年11月23日に実施することで固まっていたという。だがその議論を全て壊すことになったのが、JRAから突き付けられた2000年にJCダートを創設するという“決定事項”だった。
そのJCダートをジャパンCと同一週としたことで、日程的に11月23日は使えない。そして近い祝日である11月3日を検討したが、2001年は土曜日で、この年は使えない。それもあってJBCの構想自体、空中分解しかねない状況もあったという。JRAはその関連について口を開いたことはないが、その後コロコロと舞台を変えたことは、創設理念に何らかの邪な想いがあったからではと個人的には考えている。
・JBC2018は“ひとつの価値観が消える日”
それでも2001年10月31日に大井競馬場で産声を上げたJBCは、米ブリーダーズカップを範とした地方競馬各地の持ち回り開催もあって着実に進化を続けた。それによりダート競馬の最高峰を競う祭典であるとともに、地方競馬最大のビッグイベントとして認知されることに成功した。
だがJCダートがなければ、カレンダー次第で11月3日と23日を使い分けることもできた。そのため11月3日に事実上固定されたことで、数年に1度やってくる土曜日は積年の課題として横たわった。そして3度目の平日開催となった2012年、月曜日に川崎競馬場のナイター開催で行われた際の売上が芳しくなく、それがJRA開催という選択肢を考える要因になったと思っている。
確かに持ち回り開催を続ける上で、永久にJRAの競馬場を排除することはできなかっただろう。だがそれは、ダート競馬の最高峰としてメディアが正当に扱い、かつそれに見合う売り上げを主催者に関係なく絶対的な規模を保ってからで十分だったはず。それが築かれる前にJRAにおける開催を依頼しなければいけなかったことは、JBCの立場を追い詰めたといえるだけに皮肉である。そしてJBCがステイタスを築く上で必要だった価値観が消えたという意味でも、残念でならない。
・気になる変更が多い、JBC2018
さて、そのJBC2018について実施要項が既に発表されているが、実は気になる変更が多い。気がついた内容を、ここで紹介したい。
1.各競走の1着賞金額が約1000万円増額
2.種牡馬登録(登録のない産駒はJBC協会への追加登録料が必要)とは別に、特別登録(=ステークスマネーの支払い義務)の実施
3.国際競走としての開催
それぞれの理由などについてはまだ調査できていないので、後日追加報告することも考えているが、ここで指摘したいことは国際競走として実施されることである。
確かに国際化の下で、JRAは全ての重賞競走を国際競走として実施するという方針はある。だがJBCはJRAが育ててきた競走ではないし、当然主体でもないので、それを持ち込むのは筋が違うのではないか。またJBC協会内にいずれは国際競走化したいという意向があるとしても(構想段階で聞いた記憶はある)、それならなぜ今年のJBCで国際競走として実施できなかったのか。地方競馬各主催者に国際競走化に向けた環境整備を求めるメッセージとしては、ちょっと違うのではないだろうか。
なので穿った見方だろうが、JBC協会とNARが協調しながら作り上げてきた基盤を、JRAが根こそぎ奪い取ってしまおうという雰囲気すら感じる。つまりJBC2018が担う役割は、JRAのネームヴァリューを活かしてステイタスを上げることばかりに目が行くと、そのアイデンティティを失う危険性がある。むしろ今まで築いてきた基盤をいかに守り、かつ2019年以降に発展するヒントを探すためであってほしいと願っている。
・特別な日になって気になること
本来はここで終わりにするつもりだったが、最近になって気になるニュースが入って来た。ご婚約が内定している秋篠宮家眞子様の結婚式が、JBC2018当日である11月4日に行われることになったからである。
何故これが気になるかといわれれば、当然当日のメディアはこの話題で持ちきりになるはずだから。当然、それがJBCの注目度に影響することについても、割り切らなければいけないだろう。だがそれによって、JBC2018を主催するJRAの中継まで飛ぶとしたら、JBC協会にとって痛し痒しになってしまうからだ。
実はJRA中継は、社会的な関心事や大規模イベントに最も影響を受けないといわれている。その通り“いつもどおり”に中継が行われるなら問題はないが、皇室関連のイベントとなれば、もしかしたらの危惧を感じてしまう。ともすればどちらの選択をしても批判にさらされてしまうことになる訳だが、どういう判断をするのか注視したいと思う。
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歴史的経緯の一部について、「優駿」2001年11月号に掲載された
「生産者という名のもとに~JBC実現までの長い道程」
